ウズボイ川

ウズボイ川

ウズボイ川（Uzboy River）は、中央アジア、現在のトルクメニスタン共和国領内に広がる広大なカラクム砂漠の北西部に位置する、かつて存在した重要な河川の旧流路です。この川は特に17世紀頃まで、中央アジアを代表する大河川であるアムダリヤ川（アム川）から分かれて流れる主要な分流の一つとして機能していました。

かつての流路と規模

ウズボイ川の流路は、アムダリヤ川からの分岐点から始まり、西へ向かっていました。その途中には、現在のトルクメニスタンとウズベキスタン国境付近に位置する広大な塩湖であるサリカミシュ湖（あるいはサリクメシ湖とも呼ばれる）を経由していました。サリカミシュ湖を通過したウズボイ川の水は、さらに西方へと流れ下り、最終的には閉鎖性塩湖であるカスピ海の東岸へと注いでいました。このかつての流路の全長は、およそ750キロメートルに及ぶとされています。乾燥した砂漠地帯において、これほどの大規模な河川が存在したことは、その周辺地域の地形形成や、古の人々の生活、交易ルートなどにも深い影響を与えていたと考えられています。

消失とその歴史

ウズボイ川がアムダリヤ川から分かれて流れる状態は、地質学的あるいは水文学的な変動により、17世紀頃に終わりを告げたと考えられています。アムダリヤ川の本流が流路を変えたり、あるいは分流点への土砂の堆積が進んだりした結果、ウズボイ川への水の供給が途絶えたと推測されています。これにより、ウズボイ川は徐々に干上がり、現在ではその広大な旧流路の痕跡が地形として残るのみとなっています。砂漠の中に残されたこの旧流路は、かつて水が豊富に流れていた時代の名残として、この地域の歴史や地理を物語っています。

現代における利用計画

ウズボイ川の旧流路は、近代においてもその水資源利用の可能性から注目されました。特に、乾燥したトルクメニスタンの農業を発展させるための灌漑用水源として、かつてのウズボイ川の経路を再利用する構想が生まれました。1950年代初頭には、すでに干上がっていたウズボイ川の旧流路に沿って、大規模な灌漑用運河の建設が計画され、実際に一部工事も開始されました。しかし、この計画は技術的な困難や経済的な課題、あるいはその他の理由により、途中で中止されることとなりました。

その後、トルクメニスタンの主要な灌漑用水路として建設されたカラクーム運河は、同じくアムダリヤ川の水を引いていますが、その流路はウズボイ川の旧流路とは異なります。カラクーム運河は、ウズボイ川の経路よりも南寄りのルートを通っており、これはウズボイ川の旧流路を直接復活させるのではなく、完全に新しい経路で水系を開発する選択がなされたことを示しています。

ウズボイ川の痕跡は、中央アジアの乾燥地帯における水資源の変動と、それに対する人間の挑戦の歴史を今に伝える重要な地形学的遺産と言えるでしょう。かつての繁栄と現代の乾燥が対照的な、この地域の厳しい自然環境を理解する上で、ウズボイ川の歴史は欠かせない要素です。

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