ウタトラン

ウタトラン遺跡

ウタトラン（Utatlán）、またはクマルカフ（Q'um'arkaj）は、グアテマラのキチェ県に位置する重要な高地マヤの遺跡です。この遺跡は、後古典期のキチェ王国の首都として繁栄し、1524年にスペイン軍によって滅ぼされました。

遺跡の概要

ウタトランという名前は、スペインに協力していたトラスカラ人によるもので、ナワトル語で「葦の場所」を意味します。キチェ語では「腐った茎」を意味するクマルカフと呼ばれ、これは「古い葦の場所」という解釈ができます。遺跡は深い谷に囲まれた山の頂上に築かれており、その地理的特徴も重要性を物語っています。

この遺跡については、キチェの文献『ポポル・ヴフ』や他の植民地時代の文書を通じて、多くの情報が記録されています。それにより、ウタトランに存在した建物の用途や役割を理解することができます。代表的な建築物には、リネージの会議のための建物、神殿、支配者層が居住していた宮殿などがあります。宮殿の壁には壁画の痕跡も残されています。特に中央広場の西に位置するトヒル神殿は、現在は残骸となっていますが、かつては人間の生贄を捧げる重要な儀式が行われた場所でした。

他にも、東側にはアウィリシュ神殿、南側にはハカウィツ神殿、中央にはククマツ神殿が配置されていました。トヒル神殿の南と広場の西側には大規模な球戯場も存在し、広場の北側には洞窟やトンネルがあり、今でも供物が捧げられています。

歴史的背景

ウタトランの建設は1129年から1142年の間に行われたと考えられています。また、ウタトランは4つの主要なリネージによる支配体制が採られており、このような政体はユカタン地方にも見られました。遺跡の構造は、キチェ族の宇宙観や宗教、社会構造を反映していることがわかります。

1524年、スペインのペドロ・デ・アルバラードがウタトランに侵攻し、町を焼き尽くしました。その後、2キロメートル東にサンタ・クルス・デル・キチェという新しい都市が建設され、この地域の行政中心となりました。しかし数年後には再びウタトランに住むこととなり、今日でもキチェのシャーマンにとっては重要な聖地となっています。20世紀のグアテマラ内戦では、ウタトランがマヤ人の抵抗運動の象徴となり、一部は軍事基地として利用されました。

調査活動

ウタトラン遺跡においては、17世紀から多くの訪問者が報告を行っています。1834年にはミゲル・リベラ・イ・マエストレが探検し、フレデリック・キャザーウッドが地図やトヒル神殿の絵を作成しました。1887年にはアルフレッド・モーズリーも訪問しています。考古学的な調査は1940年代にロバート・ウォーチョープが始め、その後、ニューヨーク州立大学オールバニ校による1970年代の詳細な調査が行われました。さらに、2003年から2006年にかけては、ラケル・マカリオによるクマルカフ民族考古学プロジェクトの調査が行われ、遺跡に関する理解が深まりました。

参考文献

遺跡に関する文献は豊富であり、様々な研究者による研究が進められています。これにより、ウタトランは今後も新たな知見が期待される遺跡です。

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