ウダヤナ

ウダヤナ王：仏教説話に登場するコーサンビー国の王

ウダヤナ（उदयन, Udayana）は、古代インドのコーサンビー（憍賞弥国）の王であり、釈迦の時代に仏教を保護したことで知られています。漢字では優填、于闐、優陀延などと音写されます。

仏典における伝説

ウダヤナ王は、仏典において様々な伝説的な物語に登場します。

『優填王経』における物語

コーサンビー国の摩因提（マーガンディヤ）には、絶世の美女である娘、無比（アヌパマー）がいました。多くの国の王たちが無比を求婚しましたが、摩因提はこれを許さず、釈迦仏に献上しようとしました。しかし、釈迦仏がこれを認めなかったため、無比はウダヤナ王の後宮に入ることになりました。王は摩因提を大臣に任命し、無比を寵愛して宮殿を建設しました。しかし、後に無比は王に讒言し、正室の皇后を弓矢で殺害しようと企てます。正后は常に仏を念じていたため、矢は皇后に当たらず、逆に王の前に飛んでいきました。これを見た王は、釈尊のもとに参じ、懺悔して仏教に帰依したとされています。

『四分律』における物語

釈迦仏がコーサンビーに滞在していたとき、ウダヤナ王は賓頭盧尊者を深く尊敬し、常に住まわせて教えを求めていました。ある時、賓頭盧尊者が王を迎えなかったことを、バラモンの大臣が悪意を持って王に告げました。王は翌日、賓頭盧尊者を訪れる際に、もし尊者が起立して迎えなければ命を奪うと告げました。翌朝、賓頭盧尊者は王が来るのを見て遠くから迎え、「善来大王」と声をかけました。王が昨日迎えなかった理由を問うと、尊者は「それはあなたのためです」と答えました。尊者は、王が昨日は善意で来たが、今日は悪意で来たため、もし自分が立たなければ、王は自分の命を奪い、地獄に堕ちるだろうと考えました。しかし、自分が立てば、王は王位を失うことになるが、王位を失うことよりも地獄に堕ちるべきではないと考えたため、起立して迎えたと説明しました。王がいつ王位を失うのかを問うと、尊者は7日後に王位を失うだろうと答えました。王は驚いて城を修復し、兵を集めて警備しましたが、7日経っても敵は現れませんでした。王は尊者の言葉を否定し、多くの采女と船で遊戯に出かけましたが、慰禅王国の波羅珠提王に捕らえられ、7年間も幽閉されたとされています。

仏像造立の起源

『増一阿含経』には、釈尊が母の摩耶夫人に説法するために三十三天に昇った際、ウダヤナ王が仏を拝することができず悲しみ、病気になったという話が記されています。王は勅命によって牛頭栴檀で五尺の釈迦仏の尊像を刻ませたところ、病気が治癒したとされています。このことから、これが仏教における最初の仏像造立であるとも言われています。

文学作品におけるウダヤナ王

ウダヤナ王は、多くの文学作品にも登場します。

『ブリハットカター』：主人公ナラヴァーハナダッタは、ウダヤナ王とウッジャイン王の娘ヴァーサヴァダッターの子として描かれています。
バーサの戯曲『スヴァプナ・ヴァーサヴァダッター』：ウダヤナ王とヴァーサヴァダッターの恋愛を主題としています。
* ハルシャ・ヴァルダナ王の戯曲『ラトナーヴァリー』：カウシャーンビー王ウダヤナとラトナーヴァリーの恋愛を主題としています。

ウダヤナ王の評価

日蓮は、これらの物語などを理由にウダヤナ王を悪王と判断しています。

嵯峨清涼寺の釈迦仏像

京都の嵯峨清涼寺にある釈迦仏像は、ウダヤナ王の勅命によって作られた二番目の像を模刻したものと伝えられています。

ウダヤナ王は、仏教説話において毀誉褒貶のある人物として描かれています。仏教美術の起源に関わる伝説や、多くの文学作品に登場するなど、後世に大きな影響を与えた王であると言えるでしょう。

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