賓頭盧
賓頭盧（びんずる）尊者：獅子吼第一の阿羅漢
賓頭盧（びんずる）、またはピンドーラ・バーラドヴァージャは、釈迦の弟子の一人で、獅子吼第一と称される人物です。十六羅漢の第一としても知られ、その博識さと慈悲深さで多くの人々を魅了しました。
生涯と出自
彼の出自については諸説ありますが、有力なものとしては、ヴァンサ国のコーサンビー（またはその城）の王、ウダヤナ（優填）の家臣であったという説があります。王はその勤勉さを見て彼を出家させたと言われています。また、別の説では、その家臣の子で、幼い頃から仏教に帰依し、出家して修行を重ね、後に具足戒を受けて各地を遊行伝道したとされています。
人物像
賓頭盧は非常に博識であり、慈悲深く、十善を重んじたと伝えられています。阿羅漢果を得て神通力を得ており、白髪で長い眉毛が特徴的な姿であったとされています。彼の説法は、他の異論を許さないほど力強く、まるでライオンの咆哮のようであったため、「獅子吼第一」と呼ばれるようになりました。
優填王が仏教に帰依した背景には、夫人の勧めがあったという説もありますが、賓頭盧尊者の説法が大きく影響したとも言われています。また、釈尊が亡くなった際には酒を飲んでいたという逸話も残っています。
エピソード
優填王との逸話
釈迦がコーサンビーに滞在していた際、優填王は賓頭盧を深く尊敬し、常に教えを乞うていました。ある時、賓頭盧が王を迎えなかったことをバラモンの大臣が告げると、王は激怒し、翌日もし迎えなければ命を奪うと告げました。翌朝、賓頭盧は遠くから王が来るのを見て自ら迎えに行き、「善来大王」と声をかけました。王がその理由を問うと、賓頭盧は「昨日は善意で来られたが、今日は悪意で来られた。もし私が迎えなければ、あなたは私を殺し、地獄に堕ちるだろう。たとえ王位を失っても、あなたを地獄に堕とすべきではないと考えた」と答えました。さらに王は「いつ王位を失うのか」と問うと、賓頭盧は「7日後に必ず失う」と予言しました。王は恐れて城を修復し警備を強化しましたが、7日経っても何も起こりませんでした。王は油断して遊んでいたところ、慰禅王国の波羅珠提王に捕らえられ、7年間も幽閉されることになったと言われています。
神通力と叱責
仏が成道してから6年後、ラージャガハ（王舎城）において、賓頭盧は軽々しく神通力を使い、外道の嘲笑を招きました。これに対し、仏陀は彼を叱責し、閻浮提（この世界）に住むことを許さず、西瞿陀尼洲（さいくごだにしゅう）へ行くように命じました。その後、閻浮提の信者たちの願いにより、仏陀は賓頭盧が戻ることを許しましたが、涅槃に入ることは許しませんでした。その結果、彼は南インドの摩利山に永住し、仏滅後の衆生を救済し、末世の供養に応じて大福田となると言われています。
各国での扱い
中国
中国では、賓頭盧の像を食堂に安置して祀る風習がありました。これは、賓頭盧が人々の食生活を守護する存在として敬われていたことを示しています。
日本
日本では、賓頭盧の像を堂の前に置き、体の悪い部分を撫でると病気が治ると信じられるようになり、「なで仏」として親しまれるようになりました。特に、「おびんづるさん」や「おびんづるさま」という愛称で呼ばれ、東大寺大仏殿や善光寺にある像が有名です。これらの像は、多くの人々に信仰され、健康祈願の対象となっています。
賓頭盧の重要性
賓頭盧尊者は、その数奇な生涯と逸話を通して、仏教の教えや人々の救済に尽力した人物として、今日でも広く信仰されています。彼の存在は、人々が困難な状況においても、慈悲と智慧を持って行動することの大切さを教えてくれます。
まとめ
賓頭盧は、釈迦の弟子の中でも特に重要な人物の一人であり、その教えと生き方は、現代においても多くの人々に影響を与えています。獅子吼第一と称される彼の力強い教え、神通力による数々のエピソード、そしてなで仏としての親しみやすさなど、彼の魅力をぜひ知っていただければ幸いです。
参考資料
関連項目
- - 長野びんずる
外部リンク
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