ウビガン

ウビガン（Houbigant）: フランスの誇る香水メーカーの軌跡

ウビガンは、1775年に創業されたフランスの香水メーカーです。このブランドは、香水商のジャン・フランソワ・ウビガンによって、パリのフォーブール＝サントノレ通り19番地にオープンしました。店の看板には「花々の籠」というロマンチックな名前が掲げられていました。このブランドの香水は、当時の貴族や著名人に愛され、歴史的な香りの一端を担ってきました。

ウビガンの香水は、ポンパドゥール夫人やデュ・バリー夫人、さらにはマリー・アントワネットなど、フランスの王侯貴族に広く利用されていました。実際、1793年にはマリー・アントワネットがギロチンにかけられる際、彼女はウビガンの小瓶を3本も胴衣に忍ばせていたという逸話があります。このような情熱的なエピソードは、ウビガンがいかにして特別な存在であったかを物語っています。

さらに、ウビガンの香水は、時代を超えて愛用され続けました。ナポレオンの妃であるジョゼフィーヌや、フィリップ・エガリテ妃ルイーズ・マリー・ド・パンティエーヴル、さらにはナポレオン3世の妃ウジェニーも、ウビガンの香りを好んで使っていました。ナポレオン自身も戦役の合間にウビガンの店を訪れ、その香水を購入するなど、彼の生活に深く根付いていたことが知られています。

19世紀に入ると、ウビガンの贔屓は広がり、英女王ヴィクトリアや英王エドワード7世、さらにはロシア皇帝アレクサンドル3世やニコライ2世、ダイアナ妃まで、多くの貴族がウビガンを愛用しました。このような著名人に支持された背景には、ウビガンが持つ特別な香りの魅力が大きく関わっています。

日本においても、このブランドの香水は評価されています。西園寺公望はフランス留学の経験があり、晩年までウビガンの香水を愛用していたことが知られています。

ウビガンが1882年に発売した「フジェール・ロワイヤル（Fougère Royale）」は、メンズ香水に多い木の葉を思わせる爽やかな香りが特徴。これは、後にフゼア系の香水の原点となりました。この香水には、人工合成香料のクマリンが使用され、当時の香水業界に革命を起こしました。

1880年にウビガンはその本社と事業所をヌイイ＝シュル＝セーヌに移転し、新しい時代への第一歩を踏み出しました。その後も、ブランドは多くの変遷を経て、1989年から90年代初頭にはジバンシーやケンゾーとの提携を行いました。現在、ウビガンの香水はダナ・パフューム社がライセンスを持ち、受け継がれています。

ウビガンは、長い歴史に裏付けられた洗練された香りの数々で、今もなお香水業界においてその存在感を放っています。香水の背後にある物語や歴史、そして愛され続ける香りを通じて、ウビガンは香水ファンにとって特別なブランドであり続けています。

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