ウベダとバエサのルネサンス様式の記念碑的建造物群

スペインのハエン県に位置するウベダとバエサは、互いに約8kmしか離れていない「双子都市」として知られています。この二つの都市の歴史地区のうち、ルネサンス期に整備された地域が、ユネスコの世界遺産に登録されています。

歴史

8世紀にイスラム勢力の支配下に入ったウベダとバエサは、13世紀にキリスト教勢力によって奪還されました。15世紀から16世紀にかけては、オリーブ生産などを背景に繁栄し、ルネサンス様式の建築物が数多く建てられました。ウベダには上流階級の邸宅が多く見られるのに対し、バエサには公共性の高い建物が多いという特徴があります。これらの建築物の多くは、建築家アンドレス・デ・バンデルビラが手掛けました。

しかし、17世紀以降、ウベダとバエサの経済は衰退し始めました。現在もウベダ周辺にはオリーブ畑が広がっていますが、かつての繁栄は失われています。

世界遺産登録への道のり

1989年、ウベダとバエサの歴史地区全体を対象とした世界遺産登録が初めて審議されましたが、ICOMOS（国際記念物遺跡会議）はスペイン国内に他にも優れた歴史地区が存在するという理由から「不登録」を勧告しました。その後、ルネサンス様式の建築物が残る地域に限定して再申請を行いましたが、ICOMOSはイタリアの歴史地区との類似性を指摘し、再び「不登録」を勧告しました。しかし、スペイン当局は推薦理由を練り直し、三度目の申請でようやく登録を認められました。

登録名は「ウベダとバエサのルネサンス様式の記念碑的建造物群」とされ、ウベダとバエサが双子のように発展し、ルネサンス様式建築の導入がスペイン国内で初期の事例であり、その影響が新世界の植民都市の設計にも及んだことが評価されました。

登録範囲

世界遺産に登録されたのは、各都市の歴史地区の中でもルネサンス様式の建築物が残るごく一部の地域に限られます。登録面積はウベダが4.2ヘクタール、バエサが4.8ヘクタールと非常に狭い範囲です。推薦時には、ウベダの主な建造物として、サン・サルバドル聖堂や、旧市庁舎などが、バエサでは、ハエーン門や、サンタ・マリア広場などが挙げられましたが、実際の登録ではこれらの具体的な建造物名は明記されていません。

日本の世界遺産関連文献には、登録範囲は両都市合わせて8件の建造物のみとしているものもあります。

登録基準

この世界遺産は、以下の二つの登録基準を満たしていると認められました。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
ウベダとバエサの16世紀の建築と都市計画は、スペインにルネサンスの理念を導入する上で重要な役割を果たしました。また、その設計はラテンアメリカにも影響を与えました。

(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。
ウベダとバエサの中心地域は、16世紀初頭のスペインにおけるルネサンス様式の建築と都市計画の優れた初期の事例です。

参考文献

ICOMOS (2003), Ubeda-Baeza (Spain)/ Ubeda-Baeza (Espagne) (PDF)
フィオナ・ダンロップ (2003) 『ナショナルジオグラフィック海外旅行ガイドスペイン編』第2版、大久保みどりほか訳、日経ナショナルジオグラフィック社
フランスミシュランタイヤ社 (1998) 『ミシュラン・グリーンガイドスペイン』第2版、実業之日本社
世界遺産アカデミー監修 (2006) 『世界遺産学検定公式テキストブック2』講談社
世界遺産アカデミー監修 (2012) 『すべてがわかる世界遺産大事典・下』マイナビ

関連項目

ウベダ
バエサ
es:Baeza (Jaén): Patrimonio Monumental#Patrimonio_Monumental)

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