ウルトラバロック

ウルトラバロックとは

ウルトラバロックとは、メキシコやペルーなど中南米諸国において、スペインやポルトガルが持ち込んだバロック建築が、現地の文化や美意識と融合し、独自の発展を遂げた建築様式のことです。この用語は、写真家の小野一郎氏によって提唱されました。

歴史的背景

16世紀の大航海時代、スペインやポルトガルはラテンアメリカやフィリピンに植民地を拡大しました。植民地支配を安定させるため、キリスト教の布教と教会の建設が重要な政策となりました。当初、教会建築はヨーロッパから部材が運ばれていましたが、次第に現地の材料や職人が用いられるようになります。その過程で、先住民の美意識や文化がバロック建築に影響を与え、独自の様式が生まれることとなりました。

ウルトラバロックの特徴

ウルトラバロックは、ヨーロッパのバロック建築の特徴である過剰な装飾や劇的な造形をさらに強調したものです。主な特徴は以下の通りです。

過剰な装飾: 教会内外を問わず、彫刻や装飾が過剰に施されています。これにより、建物の表面はまるで生き物のように豊かで複雑な印象を与えます。
極端な造形: 曲線やねじれを多用した大胆な造形が特徴です。これにより、建物全体が躍動感にあふれ、見る者を圧倒します。
鮮やかな色使い: 外壁や内部の装飾には、鮮やかな色彩が用いられます。これにより、建物は華やかで力強い印象となり、見る者の目を奪います。

これらの特徴は、ヨーロッパバロックにも見られますが、ウルトラバロックにおいては、その度合いが極端に強調されています。小野一郎氏は、メキシコの教会建築を詳細に撮影する中で、この特異な様式を「ウルトラバロック」と名付けました。

ウルトラバロックの意義

ウルトラバロックは、単にヨーロッパの建築様式を模倣したものではありません。それは、異文化が融合し、新しい美を生み出した結果です。先住民の美意識や文化が取り込まれることで、より複雑で力強い表現が可能になりました。ウルトラバロックは、建築を通して、異なる文化がどのように交わり、新しい文化を生み出すのかを示す貴重な例と言えるでしょう。

関連事項

スペイン: ウルトラバロックの源流となったバロック建築を伝えた国。
スペイン帝国: ウルトラバロックが生まれた背景である、中南米における植民地支配を担った国家。
バロック建築: ウルトラバロックの基礎となるヨーロッパの建築様式。
ラテンアメリカ: ウルトラバロックが発展した地域。
新スペイン: スペインがメキシコに作った植民地。
ブラジル: ポルトガル植民地時代にバロック様式が伝わった。
フィリピン: スペイン植民地時代にバロック様式が伝わった。フィリピンのバロック様式教会群は世界遺産に登録されている。

関連書籍

* 『ウルトラバロック』小野一郎著、新潮社、1995年 ISBN 978-4106024122

この書籍では、ウルトラバロック様式の建築が、写真とともに詳細に解説されています。ウルトラバロックに興味を持った方は、ぜひ手に取ってみてください。

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