ウルフ・セーデルブルム

ウルフ・セーデルブルム（Ulf Söderblom）

1930年2月5日にフィンランド南西部の都市トゥルクに生を受け、2016年2月4日、86歳の誕生日を目前にして惜しまれつつ世を去ったウルフ・セーデルブルムは、20世紀後半のフィンランド音楽界において傑出した存在感を放った指揮者です。特に、フィンランド国立オペラの首席指揮者として長きにわたりその芸術的牽引役を務め、また国内屈指の音楽祭であるサヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルの再興に決定的な役割を果たした功績は、現代フィンランドのオペラ・シーンを語る上で欠かせません。

トゥルクで誕生したセーデルブルムは、その音楽的才能を育むため、まず地元のオーボ・アカデミー大学で音楽学者オット・アンデルションのもとで学びました（1950年～1952年）。さらに研鑽を積むべくウィーン国立音楽大学に進み、著名な指揮教授ハンス・スワロフスキーに師事（1954年～1957年）。この国際的な学びは、彼の指揮者としての基盤を築く上で重要な経験となりました。

指揮者としてのキャリアは、1957年に故郷トゥルクでのモーツァルトのオペラ『魔笛』で華々しく幕を開けました。同年、彼は生涯の伴侶となる理学療法士カリン・ヘレナ・エールンルートと結婚しています。

1957年、彼はフィンランド国立オペラでの活動を開始しました。当初は主に合唱指揮者として経験を積んでいましたが、その手腕が認められ、1973年には首席指揮者兼音楽監督に就任。以降20年間にわたり（1973年～1993年）、同オペラの芸術水準向上に尽力し、フィンランドにおけるオペラ上演の中心的存在としてその地位を確立しました。

彼の最大の功績の一つに、長期にわたって休止していたサヴォンリンナ・オペラ・フェスティバルの再興があります。この歴史ある音楽祭は、彼の情熱的な努力によって1967年に復活を遂げました。サヴォンリンナの荘厳なオラヴィ城を舞台に、セーデルブルム自身の指揮によるベートーヴェンのオペラ『フィデリオ』が上演され、フェスティバル再開の祝祭ムードを盛り上げました。

セーデルブルムは、フィンランドの作曲家による新作オペラを積極的に紹介したことでも知られています。彼の指揮により、多くの重要なフィンランドオペラが世界初演を迎えました。その中でも特に注目されるのは、ヨーナス・コッコネンの代表作『最後の誘惑』（1975年、ヘルシンキ）や、アウリス・サッリネンの初期の成功作である『騎手』（1975年、サヴォンリンナ）、そして壮大な『クレルヴォ』（1995年、ロサンゼルス）などです。これらの作品は、フィンランドオペラのレパートリーを豊かにし、国内外での評価を高める上で不可欠な役割を果たしました。

彼の指揮による世界初演には、これらの他にも以下の作品が含まれます。

パーヴォ・ヘイニネン『綾の鼓』（1984年、ヘルシンキ）
パーヴォ・ヘイニネン『ナイフ』（1989年、サヴォンリンナ）
* エルク・ベリマン『歌う樹』（1995年、ヘルシンキ）

また、セーデルブルムは録音の分野でも重要な業績を残しています。特に1972年には、アーッレ・メリカントのオペラ『ユハ』の世界初録音を手がけ、埋もれていたフィンランドの傑作を世に紹介しました。

指揮台での活躍に加え、セーデルブルムは教育活動にも熱心でした。シベリウス音楽院で指揮法を教え、1965年から1968年にかけては同音楽院のオーケストラを率いました。晩年には、母校であるオーボ・アカデミー大学でもオーケストラの指揮にあたり（1991年以降）、1998年には同大学より長年の功績を称えられ、名誉博士号を授与されました。

フィンランド音楽への深い理解と情熱、そしてオペラへの献身によって、ウルフ・セーデルブルムはフィンランドの音楽史にその名を刻んでいます。彼の功績は、今なお多くの人々に記憶されています。

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