ウンデット・ニー

ウンデッド・ニー：歴史と闘いの地

ウンデッド・ニー（ラコタ語: Cankpe Opi）は、アメリカ合衆国サウスダコタ州南西部のオグラララコタ郡に位置する地域であり、町です。この地は、パインリッジ居留地内にあり、アメリカ先住民（インディアン）のスー族（ラコタ部族）が暮らしています。ウンデッド・ニーという名前は、付近を流れる小川、ウンデッド・ニー・クリークに由来します。

歴史的背景

ウンデッド・ニーは、アメリカ先住民の歴史において、非常に重要な場所です。1890年には、アメリカ軍による「ウンデッド・ニーの虐殺」が起こり、多数のスー族が犠牲となりました。さらに、1973年には、アメリカ・インディアン運動（AIM）が主導した「ウンデッド・ニー占拠事件」が発生し、アメリカ先住民の権利を求める運動の象徴となりました。

地理と人口

ウンデッド・ニーは、サウスダコタ州の南西部、ネブラスカ州に近い場所に位置し、標高は986mです。面積は約2.8平方キロメートルと小さく、2000年の国勢調査では人口328人と人口密度も低い地域です。住民のほとんど（98.78%）がスー族を中心とするインディアンで、他に少数の白人やヒスパニック系の人々も暮らしています。しかし、生活水準はあまり高くなく、失業問題が深刻です。

ウンデッド・ニー占拠事件

事件の発端

1972年、白人によるインディアンへの暴力事件が相次ぎました。まず、51歳のオグララ族男性レイモンド・イエローサンダーが白人グループに拉致、暴行され殺害されるという事件が起こりました。警察はこれを酔っ払いの凍死として処理しようとし、被害者の家族は憤りました。この事件がAIMに助けを求めるきっかけとなりました。

さらに1973年1月には、20歳のインディアン男性ウェズリー・バッド・ハート・ブルが、白人男性に刺殺される事件が発生しました。この事件も警察はまともに捜査せず、白人がインディアンを殺害しても、罪に問われない現状への不満が高まりました。

このような状況下で、AIMは抗議活動を開始し、旧裁判所での抗議活動が警察によって弾圧されるという事件も発生しました。当時のパインリッジ居留地は、部族議長リチャード・ディック・ウィルソンの私物化と暴力団によるテロにより、内戦状態に近い状況でした。

占拠の開始

1973年2月27日、スー族の伝統派とAIMは、ウィルソンと白人による暴力と差別の実態調査を求め、ウンデッド・ニーに集結しました。彼らは、かつて虐殺が起こった場所を占拠することで、抵抗の意思を示しました。占拠には、様々な部族から約300人が参加し、子供たちも加わりました。この占拠は、アメリカ合衆国政府との間で71日間に及ぶ武力衝突に発展しました。

占拠中の状況

占拠中、AIMはウンデッド・ニーを「解放区」と宣言し、世界中の人々から支援を受けました。医薬品や食料はFBIや州警察の目を盗みながら届けられ、飛行機からの投下も行われました。デニス・バンクスによる全国放送での呼びかけは、多くの共感を呼びました。しかし、連邦政府は占拠を「共産主義思想に惑わされたインディアンの反乱」として報道し、国民の関心を他に逸らそうとしました。

占拠中、政府との戦闘でインディアン側に二人の死者が出ました。政府側は赤十字も無視して攻撃を続け、占拠期間中に40万発以上の銃弾がインディアンに向けて撃たれました。

占拠の終結

1973年5月8日、占拠は終わりを迎えましたが、連邦政府は約束を反故にし、FBIによる法廷闘争が始まりました。指導者たちは逮捕され、多くが刑務所に送られました。占拠地は撤去され、居留地ではその後もテロが続きました。

占拠による犠牲者

占拠中、フランク・クリアウォーターとローレンス・バディ・ラモントが命を落としました。特にラモントの墓石には「2000人がここウンデッド・ニーに来て、一人のみここに残る」という言葉が刻まれ、この事件の悲劇を物語っています。占拠地以外でも多くの人々が殺害されました。

占拠の指導者たち

占拠を主導したのは、ラッセル・ミーンズ、デニス・バンクス、クライド・ベルコートなどです。彼らは、アメリカ先住民の権利を求める運動において、重要な役割を果たしました。

外部リンク

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