エアフルト憲法

エアフルト憲法：ドイツ統一への挫折とその後

1848年のドイツ革命とフランクフルト憲法の失敗は、ドイツ国民による下からの統一が不可能であることを示しました。統一は、プロイセン王国かオーストリア帝国のいずれかによる「上から」の主導しかないと認識されるようになったのです。

プロイセンによる統一構想

フランクフルト国民議会の勢力が衰えると、プロイセンは1849年5月、ドイツ統一計画を策定しようと動き出しました。しかし、オーストリア、バイエルン、ザクセン、ハノーファー以外の邦は、フランクフルト国民議会への反発を理由に、プロイセンの呼びかけに応じませんでした。

プロイセンの提案は、プロイセンを盟主とするドイツ諸邦の連邦を組織し、オーストリアとは国際法上の同盟関係を結ぶというものでした。これは、プロイセンがオーストリアを武力によって排除する意思がないことを示していました。

オーストリアとバイエルンは、プロイセンの提案を拒絶し、協議はプロイセン、ザクセン、ハノーファーの三邦間のみで進められることになりました。これが「三王同盟」です。

三王同盟と憲法草案

三王同盟は、プロイセンを盟主とし、オーストリア以外のドイツ諸邦が徐々に加入することを想定していました。同盟規約は、将来のドイツの関係を時勢と正義の原則に基づいて規定し、憲法を与えることを定めていました。しかし、同盟規約が旧ドイツ同盟規約を参照した点には矛盾があり、オーストリアの干渉の口実を与えてしまう結果となりました。

オーストリアは、プロイセンのドイツ統一への決意が弱いと判断し、プロイセンの提案を一蹴します。それでも、プロイセンはザクセン、ハノーファーとともに憲法草案を策定しました。

1849年6月には、「管理委員会」が設置され、ドイツ各邦への同盟加入の勧誘が始まりました。エアフルトには連邦仲裁裁判所が設置され、バイエルンを除くほとんどの邦が最終的に加入しました。しかし、これらの邦の支持は必ずしも熱心なものではなく、いつでも形勢に応じて態度を変える可能性がありました。

憲法草案の内容

憲法草案は、ドイツ諸邦を連邦国（ライヒ）とし、プロイセン国王を世襲の連邦首班とすることを定めていました。議会は、国民院と連邦院の二院制で、国民院は間接選挙、連邦院は各邦政府と議会の任命・選挙によって構成されるものでした。国民院の選挙は、保守的な三級選挙制を採用していました。

ゴータ会議とその後

プロイセンの連邦国家建設案は、ドイツ国民の一部に支持されました。1849年6月、フランクフルト国民議会の首脳らが主催した「ゴータ会議」では、三王同盟に基づく憲法草案を支持する意見が出されました。

しかし、オーストリアの圧力により、ザクセンとハノーファーはプロイセンから離反し、「四王同盟」を結成、プロイセンに対抗するようになりました。

エアフルト連合議会と憲法の挫折

1850年3月、エアフルトで「エアフルト連合議会」が開かれました。議会は憲法草案を可決しましたが、プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム4世は、オーストリアへの恐怖心と、大邦の不参加による負担の大きさから、憲法の施行に消極的でした。

結果、エアフルト憲法は施行されず、消滅してしまいました。オーストリアは、旧ドイツ同盟の復活を企てました。

四王同盟とヘッセン選帝侯国憲法争議

四王同盟は、オーストリアを盟主とし、地方分権的な連邦国家を構想していました。プロイセンの優位は排除され、オーストリアの影響力が強まりました。

ヘッセン選帝侯国での憲法争議をきっかけに、オーストリアは同盟執行を行い、プロイセンはオーストリアに屈服せざるを得なくなりました。

オルムッツ協定とドレスデン会議

1850年11月、プロイセンはオーストリアとの間で「オルミュッツ協定」を結びました。この協定でプロイセンは、プロイセンを盟主とする同盟の解散、旧ドイツ同盟の復活を認めました。

その後、ドイツ同盟改正のための「ドレスデン会議」が開かれましたが、オーストリアの支配下に置かれ、プロイセンの優位は回復しませんでした。

エアフルト憲法は、ドイツ統一という大きな目標を掲げながらも、オーストリアとの力関係、国内諸勢力の複雑な思惑、そしてプロイセン王自身の消極性によって挫折した歴史的な出来事でした。この出来事は、後のプロイセンによるドイツ統一への道筋に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

もう一度検索