エアラインズPNG 1600便不時着事故

エアラインズPNG 1600便不時着事故の概要

2011年10月13日、パプアニューギニアのマダン州で、エアラインズPNGの1600便が不時着し、多数の犠牲者を出す航空事故が発生しました。この事故は、パプアニューギニアで発生した航空事故として、2番目に死者数が多い悲劇となりました。

事故の概要

エアラインズPNG 1600便は、ラエ・ナブザブ空港からマダン空港へ向かう国内定期便でした。使用されていた機体は、デ・ハビランド・カナダ DHC-8-103型機で、この機体は2基のターボプロップエンジンを搭載していました。飛行中、両エンジンが故障し、ゴーゴリ川付近の森林地帯に不時着を余儀なくされました。

この事故により、乗員乗客32名のうち、28名が死亡するという大変痛ましい結果となりました。生存者は、機長、副操縦士、客室乗務員、そして乗客1名の計4名でした。

事故機の詳細

事故を起こしたデ・ハビランド・カナダ DHC-8-103型機（機体記号P2-MCJ）は、1988年に製造され、2003年にエアラインズPNGに納入された機体でした。総飛行時間は38,421時間、離着陸回数は48,093回を数えていました。エンジンは、プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PW121ターボプロップエンジンを2基搭載しており、事故前にそれぞれ交換されていました。

事故当時、機体のヨー・ダンパーが故障しており、自動操縦が使用できない状態でした。このため、パイロットは手動で機体を操縦する必要がありました。

乗員乗客

機長は、64歳のオーストラリア人男性で、総飛行時間18,200時間、うちDHC-8での飛行経験は500時間でした。副操縦士は、40歳のニュージーランド人男性で、総飛行時間2,725時間、DHC-8での飛行経験は391時間でした。乗客は、ほとんどがパプアニューギニア人で、中にはマレーシア国籍の中国人1名も含まれていました。多くの乗客は、ディバイン・ワード大学の卒業式典に参加する予定の親たちでした。

事故の経緯

1600便は、ラエ・ナブザブ空港を離陸後、16,000フィートまで上昇しました。マダン空港付近の天候が悪く、雷雲を避けるため、パイロットは慎重に飛行していました。進入時にフィニステール山脈を避けるため、急角度で降下する必要がありました。

降下中、機体は過速度（VMO）を超過し、警報が作動しました。機長は、プロペラの回転数を上げ、降下率を緩めようとしました。しかし、その直後、両方のプロペラの回転数がオーバースピードとなり、機内に煙が流れ込み、大きな騒音が発生しました。これにより、左エンジンが損傷し、右エンジンはフェザリング状態となりました。

パイロットはメーデーを宣言し、不時着できる場所を探しました。故障した左エンジンが大きな抗力を生み、操縦が困難になりました。最終的に、グアブ川の河口付近に不時着することになりました。機体は地表に激突し、コックピットや主翼、尾部が脱落し、火災が発生しました。

救助活動

事故によって、乗客29名のうち28名が死亡し、機長、副操縦士、客室乗務員、乗客1名が生存しました。機長は右足を負傷し、副操縦士と客室乗務員は軽傷、乗客は重度のやけどを負いました。

事故調査

事故調査では、エンジンのオーバースピードが原因であることが判明しました。DHC-8型機では、飛行中にパワーレバーをフライト・アイドル以下に動かすことは禁じられていましたが、機長が誤ってパワーレバーを操作し、プロペラがオーバースピードになったと推測されました。事故機には、オーバースピードを防ぐための装置が搭載されていましたが、パワーレバーがフライト・アイドル以下になると作動しない仕組みでした。そのため、プロペラの回転数が制御不能となり、エンジンが損傷したと考えられています。

パイロットは、降下中にプロペラの回転数を調整せず、過速度に気づくのが遅れました。また、両エンジン喪失後、不時着時のチェックリストを適切に実施しませんでした。さらに、管制官との交信に時間を取られ、機長との連携が不足したことも指摘されています。

事故原因

調査委員会は、機長が誤ってパワーレバーを操作し、プロペラの回転数が制御不能になったことが、両エンジン故障の直接的な原因であると結論付けました。また、同型機の多くに同様の現象を防ぐ仕組みがないことについても指摘しました。

事故後

エアラインズPNGは、事故後、同型機の運航を一時的に停止しました。事故機に給油を行ったラエ・ナブザブ空港では、燃料の給油を一時的に取りやめました。

この事故を受け、カナダ運輸省は、同型機にベータ・ロックアウト機構の搭載を義務付けました。

映像化

この事故は、ドキュメンタリー番組「メーデー!:航空機事故の真実と真相」の第21シーズン第4話「Power Play」で映像化されました。

関連事故

エア・カライベス1501便墜落事故
ルクスエア9642便墜落事故
キーシュ航空7170便墜落事故
メルパチ・ヌサンタラ航空6517便着陸失敗事故

脚注

注釈

出典

参考文献

* パプアニューギニア航空事故調査委員会 [in 英語] (2006). Airlines PNG P2-MCJ Bombardier DHC-8-103 Double propeller overspeed 35 km south south east of Madang (PDF) (Report) (英語).

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