エア・データ・コンピュータ

エア・データ・コンピュータ

エア・データ・コンピュータ（ADC）は、航空機が高高度かつ高速で飛行する際に必要な情報を計測し、処理する装置です。具体的には、気圧高度、対気速度、外気温度などの航空機の飛行に不可欠なデータを同時に取得し、それに基づいて精密な計算を行います。この装置は、特に高高度飛行や超音速飛行を行う機体にとって、正確な飛行データを提供するために重要な役割を果たしています。

機能と動作

航空機が高度を増していくと、エア・データの計測は非常に困難になります。例えば、外気温度を直接計測しようとすると、気流の影響などで実際の温度とは異なる値が表示されることが多いのです。これを改善するために、エア・データ・コンピュータは、静圧や動圧（ピトー圧）、外気温度を同時に測定し、それらのデータをもとに正確な外気温度を計算します。

このコンピュータは、得られたデータをもとに、気圧高度や対気速度、外気温度などの情報をコンピュータが処理し、電気信号として出力します。さらに、ATCトランスポンダに対しては、高度応答信号や気圧高度の変化率、最大運用限界速度、マッハ数といった情報を出力する機能も搭載されています。出力される情報は、時分割で複数のデータ・パスを通じて送信され、他のシステムと通信します。

自動操縦装置との連携

エア・データ・コンピュータは、自動操縦装置との連携も密接に行われます。航空機が特定の高度や速度で飛行する際、現在の気圧高度や対気速度、昇降率、マッハ数を一定の値として「ホールド」します。この状態からの変化を計算し、自動操縦装置にその情報を入力すると、自動操縦装置はその値を基にフライトを維持します。

異常監視機能の重要性

このシステムには異常監視機能も搭載されており、内部の各計算部や変換部の動作をモニタリングしています。異常を検知すると、関係する指示器や中央監視盤に異常信号を出力し、パイロットや他のシステムに通知します。

技術の進化

初期のエア・データ・コンピュータは、カム・リンク・ポテンシャルメータ、サーボモータなどを用いたアナログ的な構成が主流でした。しかし、技術の進歩に伴い、現在ではソリッドステート化されたデジタルコンピュータが主流となり、より高精度な処理能力を実現しています。さらに、アビオニクス技術や慣性航法装置の発展により、飛行データの精度や信頼性が格段に向上しています。

このように、エア・データ・コンピュータは航空機の飛行安全にとって欠かせないものであり、高度な技術を駆使して正常に機能することで、パイロットに重要なデータを提供し続けています。

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