エイドリアン・ギャレット

ヘンリー・エイドリアン・ギャレット・ジュニア（Henry Adrian Garrett Jr.）は、1943年1月3日にアメリカ合衆国フロリダ州ブルックスビルで生まれ、2021年4月22日に78歳でその生涯を閉じた元プロ野球選手（外野手）です。特に日本の広島東洋カープで強打者として名を馳せました。彼の実弟、ウェイン・ギャレットもまた、プロ野球選手として中日ドラゴンズでプレーした経験を持ちます。

選手としての歩み

ギャレットのプロ野球人生は、1961年にミルウォーキー・ブレーブスと契約したことから始まりました。メジャーリーグへの初昇格は1966年でしたが、出場はわずか4試合にとどまり、すぐにマイナーリーグへ戻ることになります。その後も、1970年にシカゴ・カブスでメジャーに再び昇格したのを皮切りに、1971年にはオークランド・アスレチックス、1973年には再びシカゴ・カブス、1975年にはカリフォルニア・エンゼルスと球団を渡り歩きましたが、MLBでの定着には至らず、シーズンの大半をマイナーリーグで過ごす日々が続きました。

転機が訪れたのは1977年。サンディエゴ・パドレス傘下のAAA級ハワイ・アイランダースから、日本の広島東洋カープに入団します。ここでは、メジャー時代とは異なり、その長打力をいかんなく発揮しました。入団初年度から35本塁打を記録すると、翌1978年にはさらに成績を伸ばし、広島の外国人選手としては球団史上初となるシーズン40本塁打を達成。主軸打者としてチームを牽引しました。特に1978年は、開幕からハイペースで本塁打を量産。4月には当時の日本プロ野球タイ記録となる月間15本塁打を放ちました。また、4月4日のシーズン4試合目での5号本塁打、そして4月13日の11試合目での9号本塁打から5月25日の25試合目での17号本塁打にかけては、いずれも当時のシーズン本塁打最短試合達成の日本プロ野球記録を塗り替える快挙でした。この年、広島市民球場で開催されたオールスターゲームでは、1試合で3本塁打を放ち、最優秀選手（MVP）に輝いています。本職は外野手でしたが、チーム事情によっては緊急時に捕手としても12試合に出場するなど、器用な一面も見せました。チームメイトからの信頼も厚く、「日本人以上に義理と人情が分かる男」として慕われていたといいます。

選手を引退した後も野球との関わりは続きました。2002年には、広島県呉市の呉二河球場で行われた日米OBドリームゲームに出場し、ここでもMVPを獲得しています。

コーチとしての活動

現役引退後の1982年からは、指導者としての道を歩み始めます。シカゴ・ホワイトソックス傘下の打撃コーチを務めたのを皮切りに、1988年から1992年まではカンザスシティ・ロイヤルズで三塁コーチ兼打撃コーチを担当しました。その後もフロリダ・マーリンズ傘下でのコーチを経て、2003年から2012年までの長期間、シンシナティ・レッズ傘下のAAA級ルイビルでコーチを務めました。2012年に常勤のコーチ職を退いた後も、2015年までスプリングトレーニングやドラフト後のミニキャンプなどで招聘されるパートタイムのコーチとして、長きにわたり若手選手の指導に携わりました。

人物像とエピソード

ギャレット家は、まさに野球一家であったと言えます。弟のウェインも彼と同じくMLBとNPB（中日）でプレーした他、末弟のチャーリー、そして息子のジェイソンも、それぞれアトランタ・ブレーブス、フロリダ・マーリンズの傘下でマイナーリーグでのプレー経験を持っています。

広島時代、同じ年にチームに加わったジム・ライトルと共に、その名前から「ギャートルズ」というユニークな愛称で呼ばれていました。この呼び名を付けたのは、当時のチームメイトであった衣笠祥雄氏であったと伝えられています。

また、当時の日本のプロ野球選手と比較して、ひときわ大きな体格をしていたギャレット選手が、日本人選手向けの小型のプロテクターを装着した際には、まるで小学生がランドセルを背負っているかのように見えた、という微笑ましいエピソードも語り継がれています。

エイドリアン・ギャレット氏は、広島東洋カープで強烈なインパクトを残した助っ人選手として、そして引退後も長年コーチとして野球界に貢献した人物として記憶されています。2021年4月22日、肺炎のため78歳で永眠しました。

もう一度検索