エウドキア・マクレンボリティサ

エウドキア・マクレンボリティサ：知略と策略の女帝

エウドキア・マクレンボリティサ（1021年 - 1096年）は、東ローマ帝国の歴史において重要な役割を果たした女性です。彼女は、まずコンスタンティノス10世ドゥーカスと結婚し皇后となりますが、夫の死後、自ら摂政として帝位につきました。しかし、不安定な政治情勢の中、彼女は強力な軍事指導者の支援を求め、ロマノス・ディオゲネス将軍と再婚、彼を皇帝ロマノス4世として即位させます。

波乱万丈の帝位継承

エウドキアはコンスタンティノス10世との間に複数の子供をもうけていました。夫の死後、彼女は息子ミカエル7世を擁立し、摂政として政治を主導しました。しかし、ロマノス4世との結婚は、単なる政治的な駆け引きではありませんでした。彼女は、東ローマ帝国を脅かす外部勢力への対応を迫られており、その危機を乗り越えるため、ロマノス4世の軍事力と権威を必要としたのです。

この結婚は、世間の反対や自身の誓いを破ることによって実現しました。彼女は、コンスタンティノープル総主教ら説得し、再婚を承認させることに成功します。この過程において、エウドキアの優れた政治手腕と交渉力が伺えます。

ロマノス4世との結婚によって、エウドキアは一時的に危機を脱しましたが、ロマノス4世の好戦的で身勝手な性格は、次第に彼女との関係を悪化させました。そして1071年、ロマノス4世はセルジューク朝との戦いで捕虜となり、エウドキアは再び息子ミカエル7世と共に政権を握ることになります。

しかし、軍部や貴族の圧力によってミカエル7世に帝位を譲り、エウドキアは修道院に退くことを余儀なくされました。その後、ミカエル7世が廃位された後、新皇帝から再婚の打診を受けますが、宮廷内の反対により実現せず、彼女は修道女として生涯を終えました。

知略と美貌を兼ね備えた女性

エウドキアは、単なる権力欲の強い女性ではありませんでした。彼女は並外れた知性と美貌を兼ね備えており、多くの歴史家から高い評価を受けています。歴史家ミカエル・プセルロスは彼女を「大変高貴で、美しく、知性があった」と評しています。また、後世の歴史家からは「第二のヒュパティア」と称賛されるなど、その知性と教養は高く評価されています。

謎の著作『Ἰωνιά』

エウドキアは、『Ἰωνιά』（『コレクション』または『スミレの花壇』）と呼ばれる歴史と伝承に関する事典を著したとされています。この書には、神や英雄に関する系譜や寓話、哲学者たちの批評などが含まれていると伝えられています。しかし、現在では、16世紀頃に創作された偽書であると考えられており、エウドキアの著作ではないという見解が有力です。

結論

エウドキア・マクレンボリティサは、東ローマ帝国という激動の時代を生き抜き、政治の中枢で活躍した稀有な女性です。彼女は、知略と策略を用いながら、自身の権力を維持し、帝国の危機を乗り越えようと努力しました。彼女の人生は、権力闘争と、時代の波に翻弄される女性の生き様を鮮やかに描き出しています。彼女が残した足跡は、現代においても歴史研究者たちの関心を集め続けています。

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