セルジューク朝

セルジューク帝国

セルジューク帝国（大セルジューク朝）は、11世紀から12世紀にかけてイラン、イラク、トルクメニスタンを中心に広がったイスラム王朝であり、いくつかの地方政権も支配下に持っていました。セルジューク族はテュルク系遊牧民であり、オグズ族の起源を持ちながらも、様々な民族が集まる多様な集団でした。中心的な指導者はトゥグリル・ベグであり、彼の率いる集団が1038年に建国されました。

歴史的背景

セルジューク朝の起源は、セルジューク家による遊牧生活の延長にありました。彼らは、イスラム教に改宗し、南下を続けながら周辺地域に進出。特に、サーマーン朝やガズナ朝に仕えたことで、一定の権力をつけました。1038年にはホラーサーンを制圧し、トゥグリル・ベグの指導のもとで、さらに勢力を拡大しました。

特に、1063年にはアルプ・アルスラーンがスルタン位を継承した後、彼の統治下でセルジューク帝国は大きな発展を遂げました。アルプ・アルスラーンは1071年にマラズギルトの戦いで東ローマ帝国に勝利し、アナトリア地域への影響を強めることになります。これにより、アナトリアへのトルコ系遊牧民の流入が始まり、のちのトルコ化の基盤が形成されました。

権力と支配の構造

セルジューク朝は、支配地域において独自の地方政権を形成し、セルジューク家長が宗主となる構造を持っていました。ルーム・セルジューク朝やシリア・セルジューク朝など、地方政権はそれぞれが独自に支配を行い、セルジューク帝国全体の多様性を生み出しました。特に、1077年に成立したルーム・セルジューク朝は、アナトリアでのトルコ系の支配を強固にし、1308年まで存続しました。

政治と文化の発展

文化の面でも、セルジューク朝は大いに栄えました。彼らの宮廷の公用語はペルシア語であり、ペルシア系の官僚が政治を担ったことから、ペルシア文化が色濃く影響を与えました。この時期に文学や学問が著しく成長し、特に著名な詩人であるウマル・ハイヤームや物語文学の完成者とされるニザーミーが活躍しました。

また、イスラム法学や神学などの教育機関として、ニザーミーヤ学院が設立され、知識の中心としての役割を果たしました。このように、政治的な支配と文化の発展が相互に影響し合い、セルジューク朝の繁栄を支えました。

衰退と滅亡

しかし、1092年に宰相ニザームルムルクが暗殺されたことを契機に、帝国は内部での権力争いに突入。バルキヤールクとムハンマド・タパルの間でスルタン位を巡る争いが激化し、大セルジューク朝は権威を失い、分裂しました。最終的には、1157年にサンジャルが病死した際に、大スルタンとしての権威が消滅し、事実上の滅亡を迎えました。

その後も一部の地方政権は存続しましたが、イラク・セルジューク朝は1194年にホラズム・シャー朝に征服され、ケルマーン・セルジューク朝は1186年に消滅しました。ルーム・セルジューク朝は長く続きましたが、1308年に最後のスルタンが没したことで、名実ともにその時代が終焉を迎えました。結局、セルジューク帝国は、その繁栄とともに歴史に名を刻みつつも、数世代にわたる内紛と外部の圧力によって衰退していったと言えるでしょう。

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