エキウム・ウィルドプレッティ

エキウム・ウィルドプレッティ（Echium wildpretii）

エキウム・ウィルドプレッティは、スペインのカナリア諸島を原産とする植物であり、特にテネリフェ島のテイデ山に自生しています。この植物は通常、3メートル以上の高さに成長し、花穂は長さが1メートルを超えることもあります。現地では「タヒナステ・ロホ」という名で知られ、見た目が美しい淡紅色の花を持っています。この花は、小さな赤い花が螺旋状に配置されており、その姿はまるで宝石の塔のようです。そのため、エキウム・ウィルドプレッティは英語で「Tower of Jewels」とも呼ばれています。

生育地と環境

エキウム・ウィルドプレッティは、亜高山帯の針葉樹林に自生し、特にテイデ山の独特な環境で進化してきました。この島は大陸と繋がったことがなく、氷河期の影響を受けなかったため、独自の植物が進化しており、エキウム・ウィルドプレッティはその中の33種の一つです。毎年5月下旬から6月にかけて開花し、開花までには3年もの年月がかかります。しかし、一度花を咲かせると、その株は枯れる運命にあります。

この植物は、日光をたっぷりと必要とし、乾燥した環境でも強く育ちます。また、霜に対しても耐性があり、摂氏-5度まで耐えられるため、耐寒性にも優れています。このような特性のおかげで、エキウム・ウィルドプレッティの花蜜は非常に豊富で、養蜂家にとっては貴重な蜜源となることが多いです。ただし、開花の条件は気温や降水量に影響されやすいため、「タヒナステ蜂蜜」として販売されることは少なく、希少性があります。

日本における栽培

日本では、気候の違いからエキウム・ウィルドプレッティを生育するのは難しいとされています。しかし、1980年にコペンハーゲン大学植物園から種子を持ち帰った高林成年氏が、京都府立植物園での栽培に取り組みました。初めての花は1982年に咲き、試行錯誤の末、田中寛幸氏が京都の屋外で定着できる栽培方法を確立しました。この成果により、京都府立植物園のほかにも、安城産業文化公園デンパークや東京ディズニーシーなどで花を見ることができます。

亜種について

さらにラ・パルマ島の標高2000メートル付近には、エキウム・ウィルドプレッティの亜種である「エキウム・ウィルドプレッティ トリコシフォン（Echium wildpretii ssp. trichosiphon）」が自生しています。この亜種の花は、紫色からピンク色に変わる特長があります。エキウム・ウィルドプレッティは、色彩の美しさだけでなく、その生息地や生態においても独特な存在であると言えるでしょう。

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