エサウ

エサウは、旧約聖書の『創世記』に登場する重要な人物です。彼の名前は「赤く毛深い」という意味に由来するとされ、その特徴的な容姿が物語の重要な要素となっています。

生まれと出自

エサウは、イサクとリベカの間に生まれた双子の兄です。弟はヤコブであり、この双子の出生は、後の物語における兄弟間の対立の始まりを告げるものでした。エサウは生まれたときから全身が毛皮のようなもので覆われており、そのために「毛深い」を意味するエサウと名付けられました。彼は狩猟を得意とし、父イサクに愛されました。

長子権の喪失

物語の中で最も有名なエピソードの一つに、エサウが空腹のあまり、ヤコブに長子の権利を譲ってしまう場面があります。これは、エサウが自分の権利を軽視していたことを示唆しています。さらに、年老いて目の見えなくなったイサクが長子であるエサウに祝福を与えようとした際、母リベカとヤコブが共謀し、エサウに扮したヤコブがイサクの祝福を奪い取るという出来事がありました。この事件は、エサウの怒りを買い、ヤコブは兄から命を狙われることになります。

和解と再会

ヤコブが逃亡生活を送った後、エサウはヤコブと再会します。ヤコブは、エサウの怒りを恐れていましたが、エサウはヤコブを迎え入れ、二人は和解します。この再会は、兄弟間の深い確執を乗り越えた、感動的な場面として描かれています。

エドム人の祖

エサウの子孫は、エドム人と呼ばれるようになります。『創世記』36章には、エサウの子孫たちの名前が詳細に記されており、彼らがエドム人としての民族を形成していく様子が描かれています。エドム人は、イスラエル人との間で歴史的に複雑な関係を持つことになります。

エサウの最期

『創世記』にはエサウの最期は記述されていませんが、旧約聖書偽典である『ヨベル書』には、エサウの最期について言及があります。それによると、エサウは一度は弟ヤコブと和解するものの、息子たちに長子の権をヤコブに奪われた事を批判され、復讐心を募らせます。そして、ヤコブとその一族を襲撃しますが、最後はヤコブに矢で射られ命を落とします。その後、ヤコブは兄を埋葬し、エサウの一族はヤコブの一族の奴隷となったと記述されています。

その他の伝承

イスラーム伝承では、預言者ヨブ（アイユーブ）がエサウの子孫であるとされています。また、北海道のアイヌ民族がエサウの一族の末裔であるとする俗説（日ユ同祖論）も存在しますが、これは学術的な根拠を欠くものです。

エサウは、旧約聖書において複雑な性格を持つ人物として描かれています。彼は、長子権を軽んじる一方で、兄弟との和解を果たすなど、多様な側面を見せています。彼の物語は、人間の弱さや兄弟愛、民族の起源など、多くのテーマを内包しており、今日まで読み継がれる聖書の中でも重要な位置を占めています。

家族構成

エサウは複数の妻を持ち、それぞれの子をもうけています。
妻：
ヘト人エロンの娘アダ
ヒビ人ツィブオンの娘オホリバマ
イシュマエルの娘バセマト
息子：
エリファズ（母アダ）
レウエル（母バセマト）
エウシュ（母オホリバマ）
ヤラム（母オホリバマ）
コラ（母オホリバマ）

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