ヨベル書

『ヨベル書』は、ヘブライ聖書に収録されている『創世記』の出来事を異なる視点から記述した書物です。この書物は、エチオピア・ユダヤ教徒とエチオピア正教会によってのみ正典として認められており、その他のユダヤ教やキリスト教では偽典とされています。そのため、主流派からは受け入れられず、多くの写本が散逸してしまいましたが、『小創世記』とも呼ばれることがあります。

起源

研究によると、『ヨベル書』は紀元前2世紀頃にユダヤ人によって書かれたとされています。原本はヘブライ語で書かれていましたが、完全な形で残っているのはゲエズ語訳のみです。このゲエズ語訳は、エチオピア・ユダヤ教徒とエチオピア正教会の正典『オリット』（旧約聖書のゲエズ語訳）に組み込まれています。また、クムランの死海文書からヘブライ語の断片が発見されたことで、エッセネ派がこの書物を受け入れていたことが明らかになりました。

内容

『ヨベル書』は、シナイ山で大天使がモーセに語る形式で、天地創造から族長時代の末期までの出来事を回想しています。この書では、出来事の具体的な時期が詳細に記述されており、天地創造の年を基準とした独自の暦を用いています。この暦は、ユダヤ暦とは異なっています。

この書は、アダム以降の人類の歴史を七年ごとに区切り、各時代を配列しています。この七年の単位を「シャブア」と呼び、シャブアが七回繰り返される四十九年を「ヨベル」と呼んでいます。そのため、記録は「第Xヨベルの第Xシャブアの第X年」という形で記されています。

ユダヤ教に与えた影響

『ヨベル書』は、『創世記』にはない出来事や神学的解釈を大天使の啓示として語っています。死海文書の発見以降、エッセネ派の活動や思想に関する研究が盛んになり、『ヨベル書』はその貴重な資料として活用されています。特に、聖書朗誦に関するエッセネ派の習慣や、アブラハムが故郷を捨てた理由についての記述は、それまで『ベレシート・ラッバー』の注釈としてしか知られていなかった内容を補完するものとして重要です。

その他

長年、『ヨベル書』の研究は軽視されてきました。旧約聖書外典の研究が禁じられていた時代もあり、貴重な資料が失われてしまったことも原因です。この書の研究が本格化したのは19世紀以降のことです。

参考文献

村岡崇光訳「ヨベル書」、『聖書外典偽典 4 旧約偽典II』、教文館、1975年。

関連項目

外典
エチオピア正教
創世記
死海文書
ユダヤ暦

外部リンク

The Book Of Jubilees - The Wesley Center Online
The Book of Jubilees - Internet Sacred Text Archive
THE BOOK OF JUBILEES - Pseudepigrapha
The Book of Jubilees - Intertestamental Period
THE BOOK OF JUBILEES - Christian Classics Ethereal Library
The Book of Jubilees - Piney.Com Library of Biblical and Historical Documents
Jubilees - Virtual Religion Network
Book of Jubilees - CATHOLIC ENCYCLOPEDIA
* Book of Jubilees - 1911encyclopedia

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