エジプト第24王朝

エジプト第24王朝は、紀元前727年頃から紀元前715年頃にかけて、古代エジプトの第3中間期末期に存在した王朝です。ナイル川デルタ西部、下エジプトの主要都市サイスを根拠地とし、リビュア系の部族長であったテフナクト1世によって興されました。当時のエジプトは、中央集権が崩壊し、各地に複数の王朝や勢力が割拠する分裂時代を迎えており、第24王朝もその混乱の中から生まれた勢力の一つです。

王朝の創設者であるテフナクト1世は、様々な同時代史料において「西方の首長」や「リビア人の首長」「メシュウェシュの首長」といった称号で呼ばれており、その出自がリビア系部族のリーダーであったことを示しています。王位を称する以前の記録には、「ネイトの預言者」や「エジョの預言者」といった宗教的な役職に由来する称号も名乗っていたことが確認できます。彼はこの混乱期に乗じて勢力を拡大し、第22王朝や第23王朝、その他の地方政権が分立する中で、自らの支配領域を広げ、少なくともメンフィス周辺地域まで影響力を持ったと考えられています。

こうしたエジプトの分裂状態は、南隣に位置するヌビア王国（クシュ王国）に、エジプトへの介入の機会を与えました。新王国時代のエジプトによる支配を経て、エジプト文化、特にアメン神信仰が深く根付いていたヌビアでは、ファラオと同様の称号を持ち、カルトゥーシュに王名を記す王たちが強固な王国を築いていました。ヌビア王ピアンキは、エジプトにおけるアメン神の権威と秩序の回復を大義名分として、エジプトへの大規模な遠征を開始します。

ピアンキの侵攻に対し、テフナクト1世は当時のエジプト内の他の支配者たち、例えばタニスを拠点とする第22王朝のオソルコン4世や、レオントポリスの第23王朝のイウプト2世、ヘラクレオポリスのペフチャウアバステト、ヘルモポリスのニムロトらと同盟を結んで対抗しました。しかし、戦いはヌビア軍優位に進みます。同盟者であったヘラクレオポリス王ペフチャウアバステトが早い段階でヌビア側についたため、テフナクト1世はこれを包囲しましたが、ヌビア軍の救援によって撃退されてしまいました。その後、ヘルモポリスもヌビア軍に降伏し、戦線は下エジプトの中心地であるメンフィスへと移ります。テフナクト1世はメンフィスでの防衛戦にも敗れ、ナイル川デルタの湿地帯へ逃れざるを得なくなりました。他の主要なエジプトの王たちは次々とピアンキに降伏し、その支配下で地位を保つことを認められました。孤立したテフナクト1世も最終的にピアンキに恭順の意を示し、忠誠を誓ったとされています。

全エジプトを制圧したピアンキ王は、勝ち誇ってヌビアの首都ナパタへ帰還しました。しかし、彼が去ると、テフナクト1世は再び反乱を起こし、下エジプトの大半を掌握することに成功しました。これはヌビアの支配が一時的なものに過ぎなかったことを示しています。

テフナクト1世の死後、息子であるバクエンレネフが王位を継承しました。古代の歴史家マネトは第24王朝の王をバクエンレネフ（ボッコリス）一人としていますが、同時代史料からはテフナクト1世も王権を行使していたことが窺えます。バクエンレネフの治世に関する同時代の情報は極めて断片的で、彼の名前が確認されている珍しい例として、遠く離れたイタリア半島のエトルリアの墓から出土したエジプト製の壺に記された銘文が挙げられます。マネトの記述によれば、バクエンレネフはヌビアを再び遠征してきた第25王朝の王シャバカによって殺害されたとされており、この出来事をもって紀元前715年頃、第24王朝はヌビア王国（第25王朝）によって滅亡したと考えられています。

一般的に、第24王朝の王としては以下の二人が挙げられます。

シェプセスラー・テフナクト1世（在位：前727年頃 - 前720年頃）
ウアフカラー・バクエンレネフ（在位：前720年頃 - 前715年頃）

ただし、これらの在位年代については様々な説が存在します。

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