エジンコート (戦艦)

HMS エジンコート：七つの砲塔を持つ異形の戦艦

HMS エジンコートは、第一次世界大戦でイギリス海軍に所属した弩級戦艦です。その最大の特徴は、12インチ(30.5cm)連装砲塔を7基、計14門も搭載している点にあります。これは、当時の戦艦としては異例の多さでした。

南米の建艦競争とエジンコートの誕生

エジンコートの起源は、南米の建艦競争にあります。20世紀初頭、アルゼンチン、ブラジル、チリの「ABC三国」は、互いに軍備を増強し合っていました。特にブラジルは、イギリスにミナス・ジェライス級戦艦を発注するなど、積極的な動きを見せていました。

その中で、ブラジル海軍はさらに他国を圧倒する戦艦として、イギリスのアームストロング社に「リオデジャネイロ」を発注しました。しかし、国内事情や海軍の方針変更により、完成前に売却されることになります。

売却先として日本やイタリアも候補に挙がりましたが、最終的にオスマン帝国が購入し、「スルタン・オスマン1世」と改名されました。オスマン帝国は、ロシア帝国の南下政策に対抗するため、海軍力の増強を図っていたのです。

第一次世界大戦勃発とイギリス海軍への編入

しかし、第一次世界大戦の勃発により状況は一変します。1914年8月3日、イギリス政府はオスマン帝国に建造代金を支払った上で本艦を徴発。「エジンコート」と改名し、イギリス海軍に編入しました。これは、オスマン帝国がドイツ帝国に接近するのを防ぐための措置でした。

この接収劇はオスマン帝国の反英感情を高め、後に中央同盟国側へ傾倒する一因となりました。また、ドイツの巡洋戦艦「ゲーベン」と巡洋艦「ブレスラウ」がオスマン帝国に逃げ込み、オスマン帝国海軍に編入されたことも、その流れを加速させました。

ユトランド沖海戦とその後

第一次世界大戦中、エジンコートは主に北海で活動しました。1916年のユトランド沖海戦では、第1戦艦戦隊に所属して参加。ドイツ艦隊と交戦しましたが、目立った戦果は挙げられませんでした。

エジンコートは、その巨体と多数の砲門から、斉射時の安定性が懸念されていました。しかし、ユトランド沖海戦での実戦において、問題がないことが確認されています。

戦後、エジンコートは1919年に予備役となり、1921年に除籍。その後、スクラップとして売却され、1924年に解体されました。

艦形と性能

エジンコートは、その特異な艦形が特徴です。12インチ連装砲塔を7基も搭載したため、全長が非常に長く、イギリス海軍の戦艦としては最長でした。また、排水量も最大であり、世界最大の弩級戦艦でした。

防御力は比較的軽度でしたが、速力は当時の戦艦としては快速であり、巡洋戦艦的な性格も持っていました。主砲の門数は世界最多であり、その火力は一部の超弩級戦艦すら凌駕すると言われています。

各砲塔には曜日名が付けられ、1番砲塔から順に日曜日から土曜日まで割り振られていました。

まとめ

HMS エジンコートは、南米の建艦競争、オスマン帝国への売却、そして第一次世界大戦という激動の時代を駆け抜けた戦艦でした。その特異な艦形と経緯は、今もなお多くの人々の記憶に残っています。

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