エゾハルゼミ

エゾハルゼミ（蝦夷春蝉）

エゾハルゼミ（学名：Yezoterpnosia nigricosta）は、カメムシ目（半翅目）に属するセミ科ハルゼミ属の一種です。特徴的なオスのアピール行動である鳴き声と、比較的小さな体が特徴で、主に森林性の環境に生息しています。

特徴

オスの体長は31～33ミリメートル程度、メスは22～24ミリメートルほどになります。体色は全体的に黄褐色を基調としていますが、頭部や胸部にはやや緑色を帯びる部分も見られます。黒い線状の模様や斑紋が点在しているのが一般的です。同じハルゼミ属であるハルゼミと比較すると、体色がより淡い傾向があります。姿かたちは、ハルゼミよりもむしろ小型のヒグラシに似ていると言われます。

生息環境と生活

本種は、涼しい気候の地域にある、ブナなどの落葉広葉樹が広がる森を主な生息地としています。成虫の姿を見られるのは、同属のハルゼミよりやや遅れて、5月下旬頃から7月にかけての期間です。オスの発する鳴き声は非常に個性的で、「ミョーキン・ミョーキン・ケケケケ…」や、「オーギィー・オーギィー・オーギィーォ・キギギギギギギ」といったように聞こえると表現されます。アイヌ語ではエゾハルゼミを「ヤキ」と呼びますが、これはこの鳴き声から名付けられたと言われています。エゾハルゼミは純粋な森林性のセミであり、基本的に市街地などではあまり見かけることがありません。北海道においても、市街地でその声を聞く機会は少なく、森林に深く入り込むことで初めて多くの声を聞くことができます。

分布域

エゾハルゼミは、日本では北海道、本州、四国、九州に分布しています。和名に「エゾ」と冠されていることからもわかるように、日本産のセミとしては北方系の種です。そのため、西日本での生息地は、標高の高い山地に限定される傾向があります。生息地の南限としては、鹿児島県と宮崎県の県境にある霧島山や、鹿児島県の紫尾山などが挙げられています。また、西日本の一部の山岳地帯では、コエゾゼミ（Auritibicen bihamatus）と同じ場所で一緒に見られることもあります。北海道では、広い範囲で非常によく見られるメジャーなセミの一つです。夏の盛りには、森林や低山帯に入ると、無数のエゾハルゼミの鳴き声がこだまします。北海道にはエゾゼミやコエゾゼミなども生息していますが、これらも同様に森林性の傾向が強いため、北海道の市街地で一年を通してセミの声があまり聞こえない理由の一つとなっています。ただし、札幌市の郊外など、一部の市街地ではコエゾゼミの生息が少しずつ確認されるようになっているという報告もあります。

現状と保全

エゾハルゼミの生息環境である落葉広葉樹林は、かつて行われた伐採や、それに代わるスギやヒノキといった針葉樹の人工林への転換などによって、全国的に減少傾向にあります。特に西日本では、限られた生息地がさらに狭まっている現状が見られます。このため、多くの都府県が独自に作成しているレッドデータブックにおいて、絶滅の危機に瀕している種（絶滅危惧種）として記載されているケースが多くなっています。

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