エダウチチヂミザサ

エダウチチヂミザサ（Oplismenus compositus）

エダウチチヂミザサは、イネ科チヂミザサ属の多年草です。チヂミザサに似ていますが、穂の横枝がよく発達している点が特徴です。

特徴

草姿: 地面を這うように広がり、節から根を出します。花をつける茎は直立し、高さ20～30cmになります。
葉: 披針形で、長さ3～10cm、幅1～2cmとチヂミザサよりもやや大きめです。葉の表面は浅く波打ち、無毛またはわずかに毛があります。
葉舌: 1mm以下と短い。
葉鞘: 滑らかで、通常は無毛ですが、先端近くから葉身の基部にかけてまばらに毛が生えています。
花序: 10月頃に茎の先端に直立して現れ、長さは10～20cmとチヂミザサよりやや大きめです。主軸から6～10本の横枝が出て、斜め上に伸びます。横枝には数個から20個ほどの小穂がまばらに付きます。
小穂: 緑色で、時に紫色を帯び、長さ3～3.5mmです。小穂には粘り気のある芒が3本あります。

分布と生育環境

日本では、本州には分布せず、伊豆七島、四国南部、九州、小笠原諸島、南西諸島に分布します。国外では、中国南部、台湾、旧世界の熱帯地域に広く分布しています。林縁や道端、木陰などのやや湿った場所に生育します。

分類と近似種

チヂミザサ属は、世界の暖帯域に約5種が知られており、日本では2～3種が確認されています。エダウチチヂミザサは、本州ではほとんど見られないため、区別は容易です。ただし、九州の一部や南西諸島では、他の種と混生することがあります。

チヂミザサ (O. undulatifolius): 花序の横枝がほとんど伸びない点で区別できます。横枝はあっても短く、小穂の数も少ないです。
ダイトンチヂミザサ (O. aemulus): エダウチチヂミザサに似ていますが、葉鞘と花序に直立する長い毛が多いこと、花序の小穂の付き方がより密である点で区別できます。ただし、エダウチチヂミザサの変種として扱われることもあります。

変種

エダウチチヂミザサには、いくつかの変種が知られています。

アラゲチヂミザサ (var. owatarii): 花序の主軸に毛があるもので、奄美大島以南に分布します。
ダイトンチヂミザサ (var. intermedia): 上記の通り、エダウチチヂミザサの変種として扱われることがあります。
オオバチヂミザサ (var. patens): 葉が大きく、厚く、縁があまり波打たない点で区別できます。また、小穂の第2小花の護頴の先端が短い芒状に突き出ます。屋久島から台湾にかけて分布します。

利害

エダウチチヂミザサもチヂミザサと同様に、小穂に粘り気のある芒があり、果実が熟すと衣服などに付着します。いわゆる「ひっつき虫」として知られています。

保護の状況

環境省のレッドデータブックには指定されていませんが、千葉県では絶滅危惧II類に指定されています。

参考文献

大橋広好他編、『改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科～イラクサ科』、(2016)、平凡社
長田武正、『日本イネ科植物図譜（増補版）』、(1993)、（平凡社）
池原直樹、『沖縄植物野外活用図鑑 第5巻 低地の植物』、(1979)、新星図書
* 伊藤ふくお、丸山健一郎、『ひっつきむしの図鑑』、(2003)、トンボ出版

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