エッチェリーノ3世・ダ・ロマーノ

エッチェリーノ3世・ダ・ロマーノ：イタリア中世を彩った冷酷な軍事指導者

エッチェリーノ3世・ダ・ロマーノ(1194年4月25日-1259年10月7日)は、中世イタリアにおいてその名を歴史に刻んだ、冷酷にして非情な軍事指導者でした。ヴェネト州トレヴィーゾ出身の小領主の子として生まれた彼は、ドイツ・フランケン地方を起源とするダ・ロマーノ家の血を受け継いでいました。家系は代々イタリアに定住し、政治的影響力を徐々に拡大していきました。

エッチェリーノ3世の父、エッチェリーノ2世はヴィチェンツァなどの法務官を務めた後、修道士として余生を過ごしました。父の後を継いだエッチェリーノ3世は、当初グェルフィ派（教皇派）に属していましたが、後に神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世に接近し、皇帝派へと転身します。この決断は、彼の運命を大きく変えることとなります。

1232年、フリウーリの諸侯会議の後、エッチェリーノ3世は弟のアルベリーコと共に皇帝への忠誠を誓いました。しかし、この行為は教皇からの制裁を受ける危険性を孕んでおり、彼の政治的立場は非常に微妙なものとなりました。1233年には、ドミニコ会士ジョバンニがパドヴァ、トレヴィーゾ、ヴィチェンツァなどの民衆の支持を得てヴェローナ公として迎え入れられるという事件が発生。この際、すでに「人の姿をした悪魔」と恐れられていたエッチェリーノ3世は、修道士に服従を誓わされるという屈辱を味わっています。

しかし、エッチェリーノ3世はその後も着実に勢力を拡大していきます。1236年には皇帝派の主力として軍事行動を開始し、ヴェローナを奪還。ヴィチェンツァの支配権も掌握しました。さらに、1237年には皇帝フリードリヒ2世を支援し、マントヴァの降伏を実現。1238年には、フリードリヒ2世の娘セルヴァッジャと結婚し、皇帝派における地位を確固たるものとしました。

卓越した軍事力と冷酷な手腕で知られたエッチェリーノ3世は、皇帝派の代表的な軍事指導者として恐れられました。フリードリヒ2世の死後も、破門されたまま教会と対立を続け、イタリア北部で勢力を維持しました。彼はチッタデッラに「マルタの塔」と呼ばれる悪名高い監獄を建設し、徹底的な恐怖政治を敷き、その支配は絶対的なものでした。しかし、その強大な力は永遠には続きませんでした。

1259年、ロンバルディア地方で最も勢力のあったオベルト・パッラヴィチーニ侯との戦いで敗北し、捕らえられたエッチェリーノ3世は、自害によって生涯を終えました。彼の死後、数々の伝説が生まれ、その冷酷な支配は人々の記憶に深く刻み込まれました。ダンテ・アリギエーリの『神曲』地獄篇においても、エッチェリーノ3世は、暴力を行使した者たちが落とされる地獄の第七圏で、ディオニュシオス2世やアレクサンドロス大王と共に熱湯で煮られる姿で描かれています。これは、彼が歴史に与えた衝撃の大きさを物語るものです。

エッチェリーノ3世・ダ・ロマーノの生涯は、中世イタリアの政治的、軍事的な激動を反映するものでした。冷酷な支配者としての側面と、時代の波に翻弄された軍事指導者としての側面を併せ持つ彼の存在は、今もなお、人々の興味を惹きつけてやみません。

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