エティエンヌ・マルセル

エティエンヌ・マルセルの生涯と影響

エティエンヌ・マルセル（Étienne Marcel）は、1315年頃に誕生し、1358年に暗殺されるまでの人生を通じて、フランスの重要な市民指導者として知られています。彼の生涯は、ビジネスマンとしての成功と政治的な挫折から成り立っており、後に「中世のダントン」として称賛されることとなります。

幼少期と商業活動

マルセルは衣類商の家系に生まれました。祖父の代には、その商圏が全ヨーロッパに広がるほど繁栄していました。父を失った1333年からは、一族の商業活動に専念し、1350年からはノートルダム大聖堂の参事会長に就任。さらに1354年には「パリ商人頭」という役職に任命され、実質的にパリ市長としての権力を握りました。彼の商業的背景は、後の政治活動にも影響を与え、国王や貴族に対して市民としての権利を主張するための基盤となりました。

百年戦争と政治活動

フランス王国が百年戦争に突入していた時代、マルセルは国王ジャン2世と対立する立場を選びました。1355年に開かれた三部会では、国王の対英戦費調達のための税収管理を担当する委員会の設置を提案し、自らの政治的影響力を強めました。特に1357年、国王がポワティエの戦いで捕虜となった際には、マルセルは「大勅令」の策定に中心的な役割を果たし、国政改革の推進に努めました。

権力闘争と最期

「大勅令」の内容を巡り、王太子シャルルとの対立が激化しました。シャルルがパリを離れると、マルセルは市の防衛を強化し、さらにジャックリーの乱の指導者ギヨーム・カルルと協力を図りました。しかし、反乱が鎮圧された後、マルセルの支持基盤は崩壊し、彼は敵国であるイングランドの支援を仰ぐことを試みました。最期の時期には目的が変わり、ナバラ王カルロス2世を支持する立場に立つこととなります。彼が準備を進めていたところ、1368年7月31日に守備隊長の一人に暗殺されてしまいました。結果として、マルセルの影響力は消え去り、王太子シャルルが再びパリを掌握しました。

文化的遺産

エティエンヌ・マルセルは、歴史的な人物としてパリ市内に様々な形で記憶されています。1981年、パリの1区と2区の間に彼の名を冠した「エティエンヌ・マルセル通り」が設立されました。この通りは、ショッピングセンター「フォーラム・デ・アル」の近くに位置しています。また、同名のパリメトロ4号線エティエンヌ・マルセル駅は、1908年に設置され、彼の名を後世に伝えています。

さらに、1888年にパリ市庁舎の南端に彼の騎馬像が建立され、今もなお多くの人々の目に触れることができます。詩人アンドレ・ブルトンの作品「ひまわり」にも、マルセルの像が登場するなど、彼の影響は文学にも及んでいます。

このように、エティエンヌ・マルセルの生涯は、政治家としての活動のみならず、文化的な記憶にも刻まれ続けています。

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