エディロール・SDシリーズ

ローランドSDシリーズ：DTM音源モジュールの進化

ローランドのSDシリーズは、EDIROLブランドで展開されたDTM（デスクトップミュージック）用音源モジュールのシリーズです。このシリーズは「スタジオ・キャンバス (Studio Canvas)」という総称で親しまれており、SCシリーズの後継として登場しました。SDシリーズの大きな特徴は、ローランドのシンセサイザーXVシリーズと同系列の音源エンジンを搭載し、音質の向上を追求した点にあります。さらに、DTM音源としての機能も充実しており、特にSD-90ではDAW（デジタルオーディオワークステーション）アプリケーションとの連携を念頭に置いた設計がなされています。

充実した機能と多様な音色

SDシリーズの全機種には、光デジタル出力端子とUSB端子が装備されています。USB接続ではASIO2.0に対応しており、PCとのスムーズな連携が可能です。音色セットは、ネイティブモードやGM2モードで、サンプリング方式やその他の機能により6つのカテゴリーに分類されます。

• - クラシカル (Classical)：モノラルサンプリングによる、アンサンブルに適した音色セット。
• - コンテンポラリ (Contemporary)：モノラルサンプリングながらベロシティスイッチを備え、楽器のリアリティを追求した音色セット。
• - ソロ (Solo)：ステレオサンプリングやベロシティスイッチ、ビブラートなど、より高級感のある音色セット。
• - エンハンスト (Enhanced)：マルチエフェクトがかかっている内蔵音色を中心とした音色セット。
• - スペシャル (Special) 1, 2：ソロ・セットやエンハンスト・セットから代表的な音色を抜粋し、GM2で規定されていない音色も含むセット。

ただし、GM2モードではスペシャル・セットは利用できず、他のセットでも扱えるパラメータが制限されます。SD-20では、クラシカル・コンテンポラリ・ソロの3つのみの音色セットとなっています。さらに、GSモードやXGLiteモードも搭載されています。一部の音源は「Super Quartet」や「Hyper Canvas」としてソフトウェアシンセサイザーとしても販売されています。

各機種の特徴

SDシリーズは、各機種ごとに特徴的な機能と仕様を持っています。

• - SD-90：SDシリーズの最初の機種で、32パート、128音の同時発音数、1050の音色と30のドラムセットを搭載。外部入力端子や光デジタル入出力、コアキシャル入出力端子を備え、4スピーカーのサラウンド出力も可能。3系統のマルチエフェクトと2系統のシステムエフェクト、24bit対応のデジタルオーディオインターフェース機能も搭載し、外部からの音声をデジタルでミックスやエフェクト処理が可能。USB経由でのオーディオPC取り込みにも対応。DAWソフト「SONAR」を同梱した「ソナー・デジタル・スタジオ」や「ケークウォーク・ホームスタジオ」を同梱した「SD-90 ホームスタジオ・エディション」も販売。
• - SD-80：SD-90からオーディオインターフェース関連の機能を削減し、ステレオ2系統またはモノラル4系統のマルチアウト機能を追加。光デジタル、コアキシャルの2つのデジタル出力端子を装備。SD-90よりコンパクトで、1Uサイズのラックマウント型機器として使用可能。「ケークウォーク・ホームスタジオ」を同梱した「SD-80 ホームスタジオ・エディション」も販売。
• - SD-50：SonicCellに似た外観で、16パート、128音の同時発音数、1125の音色と32のドラムセットを搭載。MUSIC CREATOR5をバンドルした「Mobile Studio Canvas」としてセット販売。ただし、音色配列や搭載音色、受信できるコントロールに関してSD-90などとの互換性は少なく、XGLite非対応やGM2データでのバンクMSBが0の場合の音色変化の制限などの特徴を持つ。
• - SD-20：SC-8820に似た外観を持つシリーズの最下位機種。32パート、64音の同時発音数、660の音色と23のドラムセットを搭載。マルチエフェクトは非搭載で、ネイティブモードやGM2モードの音色カテゴリーは3つのみだが、上位機種と遜色ない発音を実現。光デジタル出力のみを搭載し、USBバスパワーで動作可能。当初「ミュージ郎ネットスタジオ」の同梱音源として販売され、後に単体販売。DAWソフト「SONAR6 LE」を同梱した「Cakewalk Production Plus Pack」も販売され、付属品と本体の立場が逆転する珍しい現象も見られた。

関連技術と用語

SDシリーズを理解する上で、以下の関連技術と用語についても知っておくと役立ちます。

• - GM (General MIDI)：MIDI規格の一つで、音色とコントロールチェンジを標準化したもの。
• - GS (General Standard)：ローランド独自のMIDI規格で、GMを拡張したもの。
• - XG (eXtended General)：ヤマハ独自のMIDI規格で、GMを拡張したもの。
• - DTM (Desktop Music)：パソコンを利用した音楽制作の総称。

SDシリーズは、これらの技術と規格に対応し、幅広い音楽制作に対応できる柔軟性と高い音質を兼ね備えた音源モジュールです。DTM環境の進化とともに、SDシリーズも進化を続け、多くのクリエイターに愛用されています。

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