エディンバラ新市街

エディンバラ新市街：啓蒙主義と都市計画の融合

スコットランドの首都エディンバラの中心地区の一つ、エディンバラ新市街。1765年から1850年頃にかけて建設されたこの街区は、今日でもその洗練された都市計画と美しい建築様式から高い評価を受け、旧市街と共にユネスコ世界遺産に登録されています。

新市街建設の背景

18世紀、エディンバラ旧市街は人口増加により逼迫していました。啓蒙主義思想が花開いた時代、近代的な知識人たちは、時代遅れの旧市街の環境に不満を抱いていました。そこで、町の長老たちは、旧市街の北側に位置する、かつてノア・ロックという汚染された湖があった低地への都市拡張を決断します。

この計画の中心人物となったのは、当時の市長、ジョージ・ドラモンドです。彼は都市の境界線をノア・ロックの北側にまで拡大することに成功し、湖の排水作業が開始されました。排水作業は1817年に完了しますが、それ以前から、新市街建設に向けた準備は着々と進められていました。ノース・ブリッジの架設（1772年）、そして後にザ・マウンドと呼ばれるようになる残土置き場の造成など、新しい土地へのアクセスを確保するためのインフラ整備が優先されました。

新市街の設計と建設

新市街の建設にあたっては、1766年にデザイン設計競技が開催され、22歳の若き設計士ジェームズ・クレイグが優勝しました。クレイグの設計は、シンプルな格子状の街路計画を基本としており、丘の背に沿って東西に走る大通りと、そこから南北に伸びる主要道路、そして袋小路状の小道が、二つの庭園を結びながら配置されています。この計画は、近代的な都市デザインの理想を体現したものでした。

街路の名前には、当時の国王ジョージ3世とその王妃、守護聖人、さらにはイングランドとスコットランドの統一を表すシンボルなどが用いられています。しかし、ジョージ王が一部の名称に異議を唱えたため、変更されたものもあります。例えば、プリンスィズ・ストリートは当初セント・ジャイルズ・ストリートと命名される予定でしたが、ジョージ3世の息子たちにちなんで改名されました。

建設当初は、新たな土地への入植を促進するために、最初の入居者には報奨金が支給されました。セント・アンドリュー広場の東側で建設が始まり、徐々に新市街は拡大していきます。クレイグの計画にはいくつかの変更もありました。例えば、ジョージ・ストリートの終点に予定されていた教会は、サー・ローレンス・ダンダスがその土地を所有していたため、ダンダスの邸宅に変わりました。この邸宅は、その後ロイヤルバンク・オブ・スコットランドの本店となりました。

1800年頃には、シャーロット広場周辺の建設が完了し、第一新市街が完成しました。シャーロット広場は、ロバート・アダムによる設計で、新市街の中でも特に建築的統一感の高い地区となっています。

新市街の拡大と発展

第一新市街の成功を受けて、1800年以降はさらに大規模な拡張計画が実行されました。これは第二新市街、もしくは新新市街と呼ばれ、リース川までエディンバラの市域を拡大しようとするものでした。この拡張計画も、第一新市街と同様に格子状の街路計画を基本とし、いくつかの主要な広場と街路が整備されました。

文化と商業の中心地としての発展

新市街には、国立スコットランド美術館、ロイヤル・スコティッシュ・アカデミー、スコットランド国立肖像画美術館など、多くの文化施設が集中しています。また、プリンスィズ・ストリートを始めとする主要な街路には、数多くの商業施設が立ち並び、ショッピング街としても賑わいをみせています。

1970年に完成したセント・ジェイムズ・センターは、新市街の商業の中心地として機能していますが、その近代的なデザインは、周囲の歴史的建造物群との調和について議論を呼ぶこともあります。

世界遺産登録

1995年、エディンバラ旧市街と共にユネスコ世界遺産に登録されました。その登録理由は、新旧両市街の優れた都市計画、歴史的建造物群、そして両者の調和のとれた景観にあります。新市街は、啓蒙主義時代の理想を反映した都市計画の成功例として、世界的に高い評価を受けています。

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