エドゥアルド・ストレリツォフ

エドゥアルド・アナトリエヴィッチ・ストレリツォフ（1937年7月21日 - 1990年7月22日）は、ソビエト連邦を代表するサッカー選手でした。FIFAワールドカップへの出場こそありませんが、1950年代から1960年代にかけて、その名を轟かせた伝説的なフォワードであり、「ロシアのペレ」として世界に知られています。

若き才能の開花と代表での活躍

1953年、ストレリツォフはトルペド・モスクワのユースチームに加入し、翌1954年には、わずか17歳でソ連リーグデビューを果たします。トルペドでは、後に1962年W杯チリ大会で得点王となるワレンチン・イワノフと強力な2トップを形成し、1955年には15ゴールを挙げてリーグ得点王に輝きました。

同年にはソ連代表にも初招集され、デビュー戦となったスウェーデン戦でいきなりハットトリックを達成。ソ連代表を6-0の大勝に導きました。1956年のメルボルンオリンピックでは、4試合に出場し2ゴールを記録。ソ連代表の金メダル獲得に大きく貢献しました。

レイプ事件と失われた時間

順風満帆だった彼のキャリアは、1958年に暗転します。W杯スウェーデン大会の開幕を2週間後に控えた時期に、ストレリツォフはレイプ事件の加害者として起訴されてしまいます。自白すればW杯に間に合うという誘いもあったものの、彼はそれに応じませんでした。エースを失ったソ連代表は、準々決勝でスウェーデンに敗れることとなりました。

有罪判決を受けたストレリツォフは強制労働所に送られ、サッカー選手として最も輝かしい時期を無為に過ごすことになります。しかし、この事件には不審な点が多く、当局による陰謀説が根強く残っています。KGB系のディナモ・モスクワや赤軍系のCSKAモスクワへの移籍を拒否したこと、奔放な性格が当局の反感を買ったこと、政府要人の娘を侮辱したことなど、様々な説が唱えられています。

復帰、そして晩年

1963年、ストレリツォフはモスクワに戻り、トルペドの母体である自動車工場のアマチュアチームでプレーを始めます。1965年にはトルペドに復帰し、同年のソ連リーグ優勝に貢献しました。ブランクを経てプレイスタイルは以前のストライカーからプレイメーカーへと変化しましたが、その才能は健在でした。1966年には再びソ連代表に選出され、1967年と1968年にはソ連年間最優秀選手賞を受賞しています。1970年に負傷のため引退。

1990年7月22日、喉頭癌のため死去。彼の功績を称え、トルペド・スタジアムはエドゥアルド・ストレリツォフ・スタジアムと改名されました。現代のロシアでは、彼が得意とした踵でのパスが「ストレリツォフ」という名で呼ばれています。また、彼の潔白を信じる人々によって、レイプ事件の見直しを求める活動が今も続けられています。

所属クラブ

1954-1958 FCトルペド・モスクワ
1965-1970 FCトルペド・モスクワ

参考文献
大平陽一「11 アンファン・テリブルの登場と追放」『ロシア・サッカー物語』東洋書店、2002年。ISBN 4-88595-394-4。
Kevin O'Flynn (2001年8月26日). “Loyal fans fight to clear name of Russia's Pele”. The Observer. 2021年5月5日閲覧。
* Jonathan Wilson (2006年12月14日). “:Sport blog: Was Streltsov really the glorious martyr Russian football demands?”. Guardian Unlimited. 2008年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月5日閲覧。

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