エドガー・G・ウルマー

エドガー・G・ウルマーは、1904年9月17日にオロモウツ（現在のチェコ）で生まれ、アメリカ合衆国で映画監督として活躍しました。彼のキャリアは、セットデザイナーとして始まり、ユニバーサル・スタジオやF・W・ムルナウ監督の作品に参加しました。1930年には、ロバート・シオドマクとの共同監督作品『日曜日の人々』で監督デビューを果たしました。

1934年には、ベラ・ルゴシとボリス・カーロフという二大スターを起用したホラー映画『黒猫』がヒットし、その名を広く知られるようになりました。しかし、その後の私生活におけるスキャンダルが原因で、メジャー・スタジオから事実上の追放処分を受けます。その後は、「ジョン・ワーナー」名義で西部劇を監督したり、ニューヨークに移り、イディッシュ語映画や公衆衛生に関するドキュメンタリー映画を手がけたりと、多様なジャンルの作品に携わりました。

1940年代からは、B級映画専門のスタジオであるプロデューサーズ・リリーシング・コーポレーション（PRC）で数多くの作品を監督しました。この時期の代表作としては、1944年のホラー・スリラー『青髭』、そして1945年のフィルム・ノワール『恐怖のまわり道』が挙げられます。特に『恐怖のまわり道』は、その独特の映像表現とストーリー展開から、後世の映画監督たちに大きな影響を与えました。

ウルマーの作品は、限られた予算の中で最大限の効果を追求した、その創意工夫に特徴があります。B級映画という枠の中で、独自の映像美と社会への批評性を表現し続けました。1964年の第二次世界大戦ドラマ『The Cavern』を最後に監督業から引退し、1972年9月30日にカリフォルニア州で亡くなりました。

彼のフィルモグラフィーには、『日曜日の人々』(1930)、『黒猫』(1934)などの初期作品から、『ハーレムにかかる月』(1939)、『忘れられた罪の島』(1943)などの作品が並びます。また、『青髭』(1944)や『恐怖のまわり道』(1945)といった、彼の評価を決定づけた作品もあります。晩年には、『スリの聖ベニー』(1951)、『惑星Xから来た男』(1951)などのSF作品も手がけ、幅広いジャンルでその才能を発揮しました。

ウルマーは、その生涯を通して、メジャーな映画業界のシステムに囚われず、自らの信念に基づいて映画制作を続けた人物として知られています。彼の作品は、単なる娯楽作品としてだけでなく、社会の底辺で生きる人々を描いた、社会派の作品としても評価されています。

主な作品

日曜日の人々 (1930)
黒猫 (1934)
ハーレムにかかる月 (1939)
青髭 (1944)
恐怖のまわり道 (1945)
惑星Xから来た男 (1951)



関連情報

柳下毅一郎「エドガー・G・ウルマーのイディッシュ映画」『興行師たちの映画史 エクスプロイテーション・フィルム全史』青土社、2003年、216-224頁。
エドガー・G・ウルマー - allcinema
エドガー・G・ウルマー - KINENOTE
Edgar G. Ulmer - IMDb（英語）

もう一度検索