エドモンド・ヒュー・ホジキンソン

エドモンド・ヒュー・ホジキンソンは、自転車の歴史に革命を起こしたイギリスの発明家として知られています。彼の最も偉大な功績は、自転車用変速機の特許取得にあります。1896年、彼は「グラディエント3速ギア変速システム」の特許を取得しました(イギリス特許番号1570)。これは、現代の自転車変速機の原型と言える画期的な発明でした。

このシステムの核心は、異なるサイズの複数のスプロケット（歯車）を使い、チェーンをそれらの間で移動させることで変速を行うというアイデアにあります。特許申請書には、「伝動装置の変速を行う目的で、大きさの異なる複数の小歯車を用意し、それらの間でチェーンを移動させることで駆動する」という記述が残されています。これは、現代のスプロケットとチェーンを用いた変速システムの基礎概念を明確に示しています。

ホジキンソンの変速システムは、巧妙な機構によって実現されていました。チェーンをスプロケットから持ち上げるための二つのチェーンリフターが用いられ、乗車者はペダルを逆回転させることでチェーンをスプロケットから外しました。その後、スプロケット群を横方向に移動させて目的のギアに位置を合わせ、再びペダルを漕ぎ始めるとチェーンが掛かり、変速が完了します。現代のシステムとは異なり、大きなスプロケットはホイールから離れた位置に配置され、より小さいスプロケットがハブに滑り込む構造となっていました。

チェーンの弛みを調整するため、バネ付きのアームにプーリーを取り付けた機構も採用されています。この機構は、リンリー、ビッグス、タンディーによる1884年の特許（イギリス特許番号2547、アメリカ合衆国特許第351,873号）を元に改良されたものです。

ホジキンソンのグラディエントシステムは、1900年に商品化され、市場に投入されました。そして1904年には、改良版のシステムの特許権をフランスのディジョンにあるTerrot et Compagnieに売却。同社は1907年には、ホジキンソンの改良版グラディエントシステムを搭載した自転車を生産するようになりました。

ホジキンソンの発明は、自転車の利用範囲を劇的に拡大させました。それ以前の自転車は、坂道など路面状況の変化に対応することが困難でしたが、変速機によって、乗車者はより容易に様々な路面状況を克服できるようになりました。この発明は、自転車の設計と製造に大きな影響を与え、現代の自転車の性能向上に大きく貢献したと言えるでしょう。彼の革新的なアイデアは、今日の多様な自転車変速機の基礎を築き、世界中のサイクリストに快適な走行体験を提供し続けています。

ホジキンソンのグラディエントシステムは、初期の自転車変速機として歴史的な意義を持ちます。彼の発明は、現代の自転車技術の進化における重要なマイルストーンであり、自転車文化の発展に多大な貢献を果たしました。この発明は、単なる機械的な工夫を超え、人々の生活を豊かにする技術革新の象徴と言えるでしょう。

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