エドワード・ジョンストン

エドワード・ジョンストン（Edward Johnston, 1872年2月11日 - 1944年11月26日）は、イギリスを代表する工芸家、タイポグラファー（書体デザイナー）、そしてカリグラファーとして、その名を歴史に刻んでいます。彼はウィリアム・リチャード・レザビーらと共に、イギリスにおけるアーツ・アンド・クラフツ運動の推進者として活躍しました。

1899年、ジョンストンは中央美術工芸学校（Central School of Arts and Crafts）で文字彩飾クラス（Illuminating Class）を担当し、後進の育成に尽力しました。彼の教え子には、エリック・ギル（Eric Gill）、グレイリー・ヒューイット（Graily Hewitt）、ノエル・ルーク（Noel Rooke）、ハロルド・カーウェン（Harold Curwen）といった、後にデザイン界で重要な役割を果たすことになる人物たちが名を連ねています。

ジョンストンの最も著名な業績の一つは、1916年にデザインしたロンドン地下鉄のためのサンセリフ書体「ジョンストン」（Johnston）です。この書体は、小文字の「i」や「j」のドットが菱形である点や、「l」にカギ状のシッポがついている点など、その独特な形状が大きな特徴です。シンプルながらも個性的なデザインは、公共交通機関のサインシステムに新しい風を吹き込みました。

さらに、ジョンストンは1919年にロンドン地下鉄のロゴタイプであるブルズアイ（bullseye）も手がけています。これは円形マーク（roundel）に駅名などのラベルを交差させたもので、ロンドン市民にとって馴染み深いアイコンとして、現在もロンドン各地で見ることができます。このデザインは、視認性の高さと簡潔さにおいて優れており、公共デザインの模範となりました。

ジョンストンのデザイン哲学は、機能性と美しさの融合を重視していました。彼は、文字や記号が単なる情報伝達の手段ではなく、芸術作品としての側面を持つべきだと考え、その思想は、彼のデザインに明確に表れています。彼のデザインは、その時代だけでなく、現代のデザインにも大きな影響を与え続けています。

現代のロンドン地下鉄およびバスで使用されている書体「ニュー・ジョンストン」（New Johnston）は、1979年から80年代にかけて、バンクス・アンド・マイルズ社に所属していた日本人デザイナー河野英一によって、ジョンストン・サンズを元にリデザインされたものです。これは、ジョンストンのオリジナルデザインを尊重しつつ、現代の技術やニーズに合わせて最適化されたもので、彼の遺産が現在も生き続けていることを示す好例と言えるでしょう。

エドワード・ジョンストンの業績は、タイポグラフィと公共デザインの分野において、非常に大きな影響を与え続けています。彼のデザインは、単に実用的なだけでなく、美しく、そして使いやすいという、デザインの理想を体現しています。

彼の著書「Writing and Illuminating, and Lettering」（1906年）は、カリグラフィーとレタリングの基礎を学ぶ上で重要な文献として、今もなお多くのデザイナーや学生に読み継がれています。また、ジャスティン・ハウズの著書「Johnston’s Underground Type」（日本語版『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』）は、彼のロンドン地下鉄書体に焦点を当て、その歴史と影響を詳しく解説しています。

エドワード・ジョンストンの遺産は、エドワード・ジョンストン協会によっても守られています。彼の作品は、単なるデザインではなく、文化遺産としての価値も高く、今後も多くの人々にインスピレーションを与え続けるでしょう。

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