エドワード・トーマス (詩人)

英国の詩人、エッセイスト、小説家であるフィリップ・エドワード・トーマス（Philip Edward Thomas）は、1878年3月3日に生まれ、短いながらも多岐にわたる文学活動を展開しました。

トーマスは、詩人としてだけでなく、散文作家、エッセイスト、評論家としても活躍しました。特にイギリスの自然や田園風景、地方の歴史や文化に関する深い洞察を示す作品を多く発表しており、その著作からは英国への愛情が強く感じられます。彼の詩においても、こうした主題が繊細な筆致で描かれることが多かったのです。

しかし、彼の生涯と文学的評価は、第一次世界大戦と深く結びついています。1914年に始まった大戦に対し、トーマスは1915年、37歳にして英国陸軍への入隊を決意しました。これは、彼の文学キャリアにおいて大きな転換点となりました。詩作や執筆活動を続けながらも軍務に就いた彼は、1917年にフランス戦線に派遣されます。

運命は彼に長く戦場で生きることを許しませんでした。フランス到着後まもなく、1917年4月9日、アラスの戦い（Battle of Arras）において、彼は敵の砲撃により命を落としました。39歳の誕生日を迎えたばかりでした。この悲劇的な死により、彼は第一次世界大戦における主要な戦争詩人の一人として位置づけられることになります。

彼の主要な作品には、以下のようなものがあります。

詩集

生前にEdward Eastawayという偽名で出版された小規模な『Six Poems』（1916年）を除き、主要な詩集は彼の死後に出版されました。代表的なものとして、『Poems』（1917年）、『Last Poems』（1918年）、そして完全版に近い『Collected Poems』（1920年）があります。その後も、未収録作品や選集が編纂され続け、例えばエドワード・ガーネット序文の『Selected Poems of Edward Thomas』（1927年）、R. ジョージ・トーマス編『The Poems of Edward Thomas』（1978年）、エドナ・ロングレー編『The Annotated Collected Poems』（2008年）などが出版されており、彼の詩が死後も長く評価され続けていることを物語っています。

小説

長編小説は『The Happy-Go-Lucky Morgans』（1913年）一冊を刊行しています。

散文・エッセイ

イギリスの風景、文学、歴史などを主題とした散文やエッセイ集も数多く残しました。『Horae Solitariae』（1902年）、『Oxford』（1903年）、『Beautiful Wales』（1905年）、『The Heart of England』（1906年）、特に評価の高い旅行記『The South Country』（1906年）や『The Icknield Way』（1913年）などがあります。死後に出版されたものとしては、『A Literary Pilgrim in England』（1917年）や『The Last Sheaf』（1928年）などがあります。これらの作品は、彼の博識と自然や人間への温かい眼差しを示しています。

エドワード・トーマスの文学的キャリアは、彼の早すぎる死によって中断されてしまいましたが、彼の残した多様な作品、特に戦争の悲惨さと対比されるような英国の田園を詠んだ詩は、今なお多くの読者に感銘を与え続けています。彼の作品は、第一次世界大戦という時代の中で失われた一つの声として、英国文学史において重要な位置を占めています。

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