エヌアイン完全世界

『エヌアイン完全世界』は、同人サークルSUBTLE STYLEとゲーム開発会社るつぼゲームワークスが共同で制作した対戦格闘ゲームです。前作にあたる『アカツキ電光戦記』の続編として、2010年 6月25日にアーケードゲームとして稼働を開始し、その後2012年2月22日にはNESiCAxLive向けにも配信が始まりました。

概要

本作は、前作からゲームエンジンを一新。エフェクトや演出面が強化され、より鮮やかでダイナミックな画面表現とゲームプレイが特徴です。前作がストーリーに重点を置いていたのに対し、『エヌアイン完全世界』ではストーリー要素を簡略化し、純粋な対戦ツールとしての側面に力が入れられています。

物語の鍵を握る新キャラクターとして、主人公の「エヌアイン」や「テンペルリッター」が登場します。また、前作から登場するキャラクターたちも引き続き参戦しますが、「カティ」（前作のミュカレが憑依していた少女）や「アノニム・ガード」（前作のアノニムとは別設定）のように、キャラクターによっては設定や技、性能が大きく変更されています。「マリリン」は「マリリン大姐」に、「魏」は「大魏」に名称が変更されるなど、キャラクター背景も一部更新されました。

システム面でも多数の追加要素が導入され、対戦の駆け引きが深まっています。稼働後にタイムリリースとして、二人協力プレイが楽しめるTAGプレイも解禁されました。開発は、SUBTLE STYLEのサトル氏と、るつぼゲームワークスの松島徹氏が中心となって行われ、音楽は前作に引き続き福澤正洋氏が担当しています。

システム

操作は1レバーと、弱・中・強攻撃、攻性防禦の4ボタンで行います。攻撃・攻性防禦・投げの三すくみは前作から引き継がれており、対戦の基本をなしています。ガードゲージシステムも同様に存在し、ガードで減少、ゼロになるとガードブレイクして無防備になります。ただし、前作にあった通常技ガード時の削りダメージは廃止されました。

本作で新たに追加された主なシステムは以下の通りです。

ダッシュ攻撃: ダッシュ中に繰り出す技で、ヒットした相手を壁に張り付け、壁コンボに繋げられます。
ニュートラルガード: レバーをニュートラルか下に入れるだけで、上・中段または下段を自動的にガードできます。ただし、通常のガードよりもガードゲージの消費量が大きくなります。
二段ジャンプ: 空中でもう一度ジャンプできるシステムです。
特攻ゲージによる攻撃力上昇: 必殺技ゲージである特攻ゲージのレベルに応じて、キャラクターの攻撃力がわずかに上昇します（1ゲージあたり+5%）。試合開始時には1.5ゲージ分のストックがあります。
完全煉鎖: 攻撃ボタンを連続で押すことで、簡単な操作で連続技を繰り出せるチェーンコンボシステムです。
完全世界: 1ラウンドに一度だけ使用できる強力な切り札です。特定ボタン同時押しで発動し、発動時には周囲を吹き飛ばす判定が発生します。発動中は一定時間、キャラクターの性能が強化され（攻撃力1.2倍など）、体力が徐々に回復します。また、このモード中に使用できる専用の超必殺技「完全神殺」が存在しますが、使用すると「完全世界」モードは強制的に終了します。発動終了時には特攻ゲージがゼロになり、次のラウンドもゲージ0からスタートします。

ストーリー

西暦20XX年、チベットでの崩落事故を契機に、”新聖堂騎士団”による大規模なテロが発生し、世界は混乱に陥ります。この事態に乗じ、新たな世界の覇権を巡る様々な勢力の暗闘が始まります。プレイヤーは登場キャラクターそれぞれの視点から、この戦いを体験することになります。

登場キャラクター

本作には、物語の中心となる新キャラクターと、前作から引き続き参戦するキャラクターが登場します。

エヌアイン: 主人公。旧人類を見下しますが、孤独を感じる超能力者の少年。神の複製體であり、『完全教団』に反旗を翻します。
カティ: 前作でミュカレに憑依されていた少女。ミュカレの記憶と呪われた杖を持ち、天真爛漫な性格です。
テンペルリッター: 新聖堂騎士団の女騎士。ヴァルキュリアのクローン。「プネウマ計画」の実行部隊であり、冷酷な一面を持ちます。CPU専用キャラクターとして登場しました（後にプレイアブル化）。
アカツキ: 電光機関破壊のため活動を続けるキャラクター。特攻ゲージが溜まりやすく、爆発力のある攻撃が特徴です。
鼎: ツァンポ渓谷調査に関わった後、人調審撲滅のため行動します。
塞: 失踪したカティの身を案じつつ、新聖堂騎士団の騒動に関わります。
マリリン大姐: 黒手会の新大当家。外見も性格も攻撃的な印象に変化しました。
不律: 複製體抹殺のため活動。前作とほぼ同様の戦術で戦います。
アノニム・ガード: 宗教結社『神聖クラブ』の精鋭衛兵。失踪したアノニムを捜索する設定です。前作のアノニムとは一部性能が異なります。
大魏: 山篭り修行を経て、恩人の仇であるムラクモ複製體を追います。
エレクトロゾルダート: アドラーの複製體。新聖堂騎士団の兵士として登場し、自身の寿命を延ばすため古代遺産を狙います。
アドラー: エレクトロゾルダートの一体として転生。相変わらず自身の欲望のまま行動します。
電光戦車: 前作での暴走後、遠隔操作となりましたが、本作ではエヌアインに利用されてしまいます。
完全者: 『プネウマ計画』のために新聖堂騎士団を率いる人物。前作のアノニムの体を使っています。システム強化により安定した戦い方が可能です。
ムラクモ: 陸上自衛隊の千家三佐に転生。人調審として人口削減の野望を抱きますが、新聖堂騎士団に先んじられ、自らが神になろうとします。
ヴァルキュリア: CPU専用の最終ボス。古代人であり、「旧世界に死をもたらす者」を称します。武士のような古風な口調で話し、全キャラクター中最強の防御力を持ちます。

その後の展開

本作は、2019年開催のEVO2019にて、アークシステムワークスの対戦格闘ゲーム『BLAZBLUE CROSS TAG BATTLE』への参戦が発表され、シリーズの認知度を広げました。

そして、NESiCAxLiveでのオリジナルタイトル配信開始から10周年にあたる2022年2月22日には、シリーズの新作となる『エヌアイン完全世界 Anastasis』が発表されました。この新作は旧作をベースとし、新キャラクター（イナズマ、ミュカレ-Aなど）の追加、トレーニングモードの実装、メインキャラクターイラストやUIの一新、バランス調整など、多岐にわたる改修が行われる予定です。開発は旧作オリジナルメンバー3名が担当しており、2023年の稼働を目指して、ゲームセンターコーハツ主導によるクラウドファンディングも実施されました。クラウドファンディングのストレッチ目標達成により、複数の追加要素が実現しています。

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