松島徹
松島 徹（まつしま てつ）は、日本のプログラマでありゲームクリエイターです。クレジットとしては「T. Matsushima」の名義で知られています。2021年時点では、はるつぼゲームワークス有限会社に所属しています。
彼のキャリアは、中学生だった14歳の時にナムコのシューティングゲーム『ゼビウス』をPC-6001に移植するプログラムを制作したことに始まります。このプログラムを電波新聞社の雑誌『マイコンBASICマガジン』に投稿したところ、マイコンソフトの藤岡忠氏の目に留まりました。マイコン少年の投稿作品としては驚異的な完成度だったため、藤岡氏は市販化を決定します。しかし、PC-6001は当時の他のパソコンに比べてスペックがかなり低く、アーケード版とはステージ構成が大きく異なり、さらにはゲーム中に「パックマン」が登場するなど、二次創作的な要素が強く含まれていたことから、オリジナル版の作者である遠藤雅伸氏からは厳しい評価を受けました。それでも、藤岡氏と松島氏が共に改良を続けた結果、遠藤氏もその熱意に理解を示し、最終的に『ゼビウス』ではなく『タイニーゼビウス』という名称であれば、という条件で許諾が得られ、正式に市販されることとなりました。この不完全ながらもPC-6001上で最も早く実現したゼビウスの移植版は、同機種を代表する人気タイトルの一つとなり、藤岡氏は後に松島氏の当時の仕事ぶりを「本当に天才ですね」と絶賛しています。
この時期の他の仕事としては、PC-6001mkII版の『スペースハリアー』や『グロブダー』の移植があります。当時のパソコンゲームでは、グラフィックの再現性を追求するあまり、動作速度の低下や操作性の悪化を招き、快適なプレイが困難なタイトルも少なくありませんでした。そうした状況下で、松島氏の移植はハードウェアの特性を深く理解し、単なる見た目の再現よりも、ゲームとしての楽しさを最優先する方針で開発されていました。特にPC-6001mkII版『スペースハリアー』は、「冷蔵庫が飛んでいるようだ」と揶揄されるほどグラフィックの再現性は低かったものの、原作のゲーム性は見事に維持されており、大きな話題を呼びました。
80年代後期から90年代前期にかけては、X68000版『スペースハリアー』や、メガドライブ版、X68000版の『アフターバーナー』など、数々のアーケードゲーム移植を手がけています。これらの作品はすべて、開発・販売ともに電波新聞社名義で市販されています。特に『アフターバーナー』は、松島氏自身の希望もあって開発されたもので、マイコンソフトが手がけた唯一のコンシューマーゲーム機向け作品となりました。
90年代後期に入ると、アーケードゲームのコンシューマー移植を専門とするプログラマ集団「ゲームのるつぼ」に所属し、セガの下請けとしてコンシューマー機への移植開発に深く関わります。80年代中期を代表するアーケードゲームである『スペースハリアー』や『アウトラン』といったタイトルの完全移植が困難だった当時において、90年代後半のハードウェアの進化と、松島氏の持つ高度な技術力が相まって、初めて実現可能となりました。中でもセガサターン版『スペースハリアー』は、PC-6001版から続く、松島氏にとっての『スペースハリアー』移植の集大成とも言える作品であり、オリジナル版のアーケード基板ではスペックの限界から発生しがちだった処理落ちや、効果音の途切れが一切なく、「原作を超えた移植」と称されるほど高く評価されています。当時のセガサターン開発では、C言語と『バーチャファイター2』のライブラリを使用するのが一般的な手法でしたが、松島氏らは独自のスタイルを貫き、X68000環境とアセンブラ言語を用いて開発を完遂させたというエピソードは有名です。また、その後のC言語への移行も、わずか週末に参考書を読んだだけで対応できたという逸話は、るつぼ社内でも語り草になっています。
2000年代以降は、「るつぼゲームワークス」の一員として、アーケードゲームの開発を主導しています。代表作としては、2006年11月稼働の体感型バトルシミュレーターゲーム『機動戦士ガンダム 戦場の絆』や、2010年6月稼働の対戦格闘ゲーム『エヌアイン完全世界』などがあります。
また、松島氏は2000年代に入ってもPC-6000シリーズへの強い愛着を持ち続け、2008年にはPC-6001の仕様や雰囲気を再現したWindows用ゲーム『特攻空母ベルーガ』を自ら制作し、PC-6000シリーズのファンサイトを通じて公開しました。この作品は、有志の手によってPC-6001用カートリッジとしても移植され、さらに2015年には、セガから発売された『龍が如く0 基本無料アプリ for PlayStation Vita』内のミニゲームとして、松島氏自身の手によりPS Vita向けにも移植されています。PS Vitaでの開発は初体験だったにも関わらず、わずかに開発資料に目を通しただけで開発手法を習得したというエピソードは、改めてその天才的な能力を示すものとして語り継がれています。
近年の活動としては、2021年には、所属するはるつぼゲームワークスとD4エンタープライズの提携を通じ、D4が運営するレトロゲーム配信サービス『プロジェクトEGG』にて、MSX1/MSX2向けに完全新作となる『SF特攻警備隊ダイナマイト轟轟』が配信されました。さらに2022年4月には、「ゲームセンターKO-HATSU」の呼びかけに応じる形で、『エヌアイン完全世界』のオリジナル開発チームが再結集し、続編となる『エヌアイン完全世界 Anastasis（仮）』の開発を目指したクラウドファンディングが実施されました。本作は2023年の稼働開始を予定しています。
中学生時代にその才能を開花させて以来、様々なプラットフォームで数々のゲーム開発に携わり、特に困難な移植において「天才」と称賛される技術力を発揮し続けている、日本のゲーム業界における稀代のプログラマと言えるでしょう。
彼のキャリアは、中学生だった14歳の時にナムコのシューティングゲーム『ゼビウス』をPC-6001に移植するプログラムを制作したことに始まります。このプログラムを電波新聞社の雑誌『マイコンBASICマガジン』に投稿したところ、マイコンソフトの藤岡忠氏の目に留まりました。マイコン少年の投稿作品としては驚異的な完成度だったため、藤岡氏は市販化を決定します。しかし、PC-6001は当時の他のパソコンに比べてスペックがかなり低く、アーケード版とはステージ構成が大きく異なり、さらにはゲーム中に「パックマン」が登場するなど、二次創作的な要素が強く含まれていたことから、オリジナル版の作者である遠藤雅伸氏からは厳しい評価を受けました。それでも、藤岡氏と松島氏が共に改良を続けた結果、遠藤氏もその熱意に理解を示し、最終的に『ゼビウス』ではなく『タイニーゼビウス』という名称であれば、という条件で許諾が得られ、正式に市販されることとなりました。この不完全ながらもPC-6001上で最も早く実現したゼビウスの移植版は、同機種を代表する人気タイトルの一つとなり、藤岡氏は後に松島氏の当時の仕事ぶりを「本当に天才ですね」と絶賛しています。
この時期の他の仕事としては、PC-6001mkII版の『スペースハリアー』や『グロブダー』の移植があります。当時のパソコンゲームでは、グラフィックの再現性を追求するあまり、動作速度の低下や操作性の悪化を招き、快適なプレイが困難なタイトルも少なくありませんでした。そうした状況下で、松島氏の移植はハードウェアの特性を深く理解し、単なる見た目の再現よりも、ゲームとしての楽しさを最優先する方針で開発されていました。特にPC-6001mkII版『スペースハリアー』は、「冷蔵庫が飛んでいるようだ」と揶揄されるほどグラフィックの再現性は低かったものの、原作のゲーム性は見事に維持されており、大きな話題を呼びました。
80年代後期から90年代前期にかけては、X68000版『スペースハリアー』や、メガドライブ版、X68000版の『アフターバーナー』など、数々のアーケードゲーム移植を手がけています。これらの作品はすべて、開発・販売ともに電波新聞社名義で市販されています。特に『アフターバーナー』は、松島氏自身の希望もあって開発されたもので、マイコンソフトが手がけた唯一のコンシューマーゲーム機向け作品となりました。
90年代後期に入ると、アーケードゲームのコンシューマー移植を専門とするプログラマ集団「ゲームのるつぼ」に所属し、セガの下請けとしてコンシューマー機への移植開発に深く関わります。80年代中期を代表するアーケードゲームである『スペースハリアー』や『アウトラン』といったタイトルの完全移植が困難だった当時において、90年代後半のハードウェアの進化と、松島氏の持つ高度な技術力が相まって、初めて実現可能となりました。中でもセガサターン版『スペースハリアー』は、PC-6001版から続く、松島氏にとっての『スペースハリアー』移植の集大成とも言える作品であり、オリジナル版のアーケード基板ではスペックの限界から発生しがちだった処理落ちや、効果音の途切れが一切なく、「原作を超えた移植」と称されるほど高く評価されています。当時のセガサターン開発では、C言語と『バーチャファイター2』のライブラリを使用するのが一般的な手法でしたが、松島氏らは独自のスタイルを貫き、X68000環境とアセンブラ言語を用いて開発を完遂させたというエピソードは有名です。また、その後のC言語への移行も、わずか週末に参考書を読んだだけで対応できたという逸話は、るつぼ社内でも語り草になっています。
2000年代以降は、「るつぼゲームワークス」の一員として、アーケードゲームの開発を主導しています。代表作としては、2006年11月稼働の体感型バトルシミュレーターゲーム『機動戦士ガンダム 戦場の絆』や、2010年6月稼働の対戦格闘ゲーム『エヌアイン完全世界』などがあります。
また、松島氏は2000年代に入ってもPC-6000シリーズへの強い愛着を持ち続け、2008年にはPC-6001の仕様や雰囲気を再現したWindows用ゲーム『特攻空母ベルーガ』を自ら制作し、PC-6000シリーズのファンサイトを通じて公開しました。この作品は、有志の手によってPC-6001用カートリッジとしても移植され、さらに2015年には、セガから発売された『龍が如く0 基本無料アプリ for PlayStation Vita』内のミニゲームとして、松島氏自身の手によりPS Vita向けにも移植されています。PS Vitaでの開発は初体験だったにも関わらず、わずかに開発資料に目を通しただけで開発手法を習得したというエピソードは、改めてその天才的な能力を示すものとして語り継がれています。
近年の活動としては、2021年には、所属するはるつぼゲームワークスとD4エンタープライズの提携を通じ、D4が運営するレトロゲーム配信サービス『プロジェクトEGG』にて、MSX1/MSX2向けに完全新作となる『SF特攻警備隊ダイナマイト轟轟』が配信されました。さらに2022年4月には、「ゲームセンターKO-HATSU」の呼びかけに応じる形で、『エヌアイン完全世界』のオリジナル開発チームが再結集し、続編となる『エヌアイン完全世界 Anastasis（仮）』の開発を目指したクラウドファンディングが実施されました。本作は2023年の稼働開始を予定しています。
中学生時代にその才能を開花させて以来、様々なプラットフォームで数々のゲーム開発に携わり、特に困難な移植において「天才」と称賛される技術力を発揮し続けている、日本のゲーム業界における稀代のプログラマと言えるでしょう。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。