エバ・ペロン

マリア・エバ・ペロンの生涯

マリア・エバ・ドゥアルテ・デ・ペロン（通称エビータ）は、アルゼンチンの象徴的な政治家であり、女優です。1919年にパンパス草原の小さな村ロス・トルドスで、母親がコックで父親が農場の経営者という家庭に私生児として生まれました。若い頃から苦境に直面し、15歳で家を出てブエノスアイレスに移り住むと、女性としてのキャリアを築き始めました。彼女はモデル業から女優業に転向し、1930年代にはラジオドラマや映画に出演するようになりました。

政界への進出

1943年、彼女はフアン・ドミンゴ・ペロン大佐に出会い、彼との関係を通じて政界に足を踏み入れることになります。ペロンが国防大臣などを歴任する中、エビータは彼の秘書的な役割とともに、労働者階級の人々に向けたラジオ番組でペロンを支持する活動を行いました。彼女の名は次第に広まり、多くの労働者に愛され、親しみを込めて「エビータ」と呼ばれるようになりました。

ファーストレディとしての活動

1945年、ペロンは軍事政権によるクーデターの影響を受け、一時拘束されます。その際、エビータは国民にペロンの解放を訴え、支持を呼びかけました。無事に解放されたペロンと、彼女は1945年に結婚し、1946年にはフアンが大統領に就任すると、エビータはファーストレディとして国政に深く関与するようになります。

エビータは労働者の権利を擁護する立場を取り、女性の地位向上に努めました。彼女は「エバ・ペロン財団」を設立し、貧しい労働者層に食料や物資を提供しました。この活動は、彼女の人気をさらに高めることになり、特に労働者階級からの支持を強固にしました。

権力の増大と批判

しかし、彼女の活動は賛否が分かれました。経済再分配の資金源としての税金や企業からの献金は、厳しい批判も受けており、また彼女自身の経歴や家来としての進出に伴う反感から、中流や上流階級からの反発を招きました。保守的なラテンアメリカの文化の中で、女性がこれほどまでに政治に関与することは特に異端視されることが多く、そのため「淫売」や「成り上がり」といった言葉で侮蔑されることもありました。

欧州への訪問と晩年

1947年には「レインボー・ツアー」としてヨーロッパを訪問し、数カ国の国家元首と会談を行い、アルゼンチンのイメージアップに努めました。しかし、1950年代には彼女の健康が悪化し、子宮頚癌が確認されます。最終的に1952年7月26日に33歳で亡くなり、彼女の葬儀には数十万人が参列しました。

死後の評判と影響

彼女の死後、フアン・ペロンは軍事クーデターにより政権を追われますが、「ペロニズモ」と呼ばれる彼女の教えを基にした政治スタイルは、アルゼンチン国内に根強く残り続けています。エビータに対する愛情は今も多くの国民に支持され、彼女を扱ったミュージカル『エビータ』は世界中で上演されるなど、彼女の存在感は色褪せることがありません。

今日、彼女の名前は数多くの作品や文化に影響を与え続けており、エビータを称えるための運動や団体も現在進行形で存在します。彼女の生涯は、主義や立場の違いを超えて、多くの人々にインスピレーションを与え続けているのです。

もう一度検索