エフェソの信徒への手紙

『エフェソの信徒への手紙』（エフェソ書）

『エフェソの信徒への手紙』、通称『エフェソ書』は新約聖書の一部であり、使徒パウロが紀元62年頃、ローマで投獄中にエフェソにあるキリスト者共同体に宛てて書いたとされています。この書簡は、その内容から直接的な問題に対処するためのものではなく、パウロが異邦人にもたらされた救いへの愛情を表現したものです。

執筆の背景

パウロはエフェソの信者たちがキリストの教えに従って生きることを希求していましたが、『ローマの信徒への手紙』とは異なり、『エフェソ書』では救いに関する深い哲学的考察がない代わりに、救いと教会の関係について詳しく述べています。

書簡の構成

『エフェソ書』は以下の構成を持っています：

1. あいさつ（1:1–2）
書簡の冒頭で、著者が自らの立場を説明します。

2. 頌栄（1:3–14）
神の計画やさらなる恵みについての賛美がなされます。

3. 福音の恵み（1:15–2:10）
福音がもたらす恵みとその意味を探求します。

4. 異邦人への救い（2:12–3:21）
キリストを通じて異邦人に与えられた救いの重要性を語ります。

5. 共同体の一致（4:1–16）
さまざまな信者の賜物があっても共同体は一つであることを強調します。

6. 生活への勧め（4:17–6:10）
日々の生活における具体的な指針と提言が述べられています。

7. 霊的な恵み（6:11–24）
最後にティキコに関する言及を含めた結びの言葉が書かれています。

エフェソの共同体

『使徒言行録』によれば、パウロはエフェソで約3ヶ月滞在し、その後再訪した際には、エフェソが小アジアにおいて重要な共同体であると認識し、さらに三年もの間その地で活動しました。その間、エフェソからアジア全域に福音が広まったことも記されています。また、パウロは最後のエルサレム訪問時に、ミレトスでエフェソの指導者たちに別れの挨拶を送りました。これらの行動は彼がエフェソの共同体を特に重視していた証と言えるでしょう。

著者と宛先

この手紙は「神のご意志によってイエス・キリストの使徒となったパウロが、エフェソの聖なる人々に送ります」と始まります。しかし現存する最古の写本には「エフェソの」という表現が見られず、宛先がより広範囲なクリスチャンコミュニティであることが示唆されています。これにより、著者の特定や実際の受取人については様々な見解が存在し、聖書批評によってその信憑性が問われています。

まとめ

『エフェソ書』は単なる教義の解説ではなく、パウロの思想や共同体の理解、救いの意義について深く掘り下げた文書として重要です。キリストと信者の間の関係や、教会としての共同体の意義について多くの示唆を与えており、信者たちに向けた愛に満ちたメッセージを伝えています。

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