使徒言行録

『使徒言行録』の概要

『使徒言行録』は新約聖書の一部で、キリスト教発展の初期段階を描写しています。この書は、主に使徒ペトロとパウロの活動を中心に据え、エルサレムに始まるキリスト教の広がりを記録しています。リレーションシップにある『ルカによる[[福音書]]』の続編として、初期のキリスト教コミュニティの状況を伝えています。

日本語における呼称

日本語の聖書において、『使徒言行録』はさまざまな呼称があります。戦前には文語訳聖書で『使徒行伝』と称され、正教会では『聖使徒行実』、カトリックでは『使徒行録』と呼ばれました。戦後の新訳聖書では、プロテスタントが『使徒行伝』を用いている一方で、福音派の新改訳聖書では『使徒の働き』と訳されました。そして新共同訳聖書では『使徒言行録』が正式な名称となっています。さらに他の訳や教派においても様々な名称が用いられ、使徒行に関する重要な記録であることが示されています。

内容と歴史的重要性

『使徒言行録』はキリスト教の初期の様子、特にユダヤ人から異邦人へと広がる過程を詳細に記しています。著者は、使徒たちの活動を通じて、教会の成立や信仰の拡大を描写しています。内容は、おおまかにエルサレムにおける教会の誕生から、ユダヤ、サマリアを経て、最終的に地中海世界へと拡がる様子を表現しています。

本文によれば、この書はルカによって書かれ、テオフィロという人物に献呈されています。このため、『使徒言行録』と『ルカによる[[福音書]]』は「ルカ文書」として呼ばれることもあります。初期キリスト教史を研究する上で『使徒言行録』は不可欠であり、その内容は後世の神学的議論や教会発展の理解に大きな影響を与えています。

構成の特徴

この書は、ペトロとパウロの二つの主要な部分に分けることができます。最初の部分ではペトロの宣教が中心となり、次の部分では主にパウロの活動に焦点が当てられています。地理的な展開は、イエスの昇天後、エルサレムから始まり、ユダヤとサマリアを経由して、最終的に異邦の世界へと広がっていく様を表現しています。この構成は、キアスムスという方法で組み立てられ、中心に位置する内容が特に重要であることを示しています。

『使徒言行録』は、ペトロによるユダヤ国内での活動から始まり、パウロの遠征活動へと展開する形で記述されています。特に、エルサレムを中心とした初期の信仰者たちの活動や、その中で迫害があったことも描かれています。こうして、初代教会の誕生と成長の過程を知る貴重な資料となっているのです。

成立時期と場所

『使徒言行録』は、2世紀の初めにはその存在が明らかであり、初期のキリスト教社で広く読まれていたことが記録されています。成立時期については諸説あり、一般的には80年頃とされており、この書が書かれた場所については、ローマまたはアジア属州のエフェソス近辺であった可能性が指摘されています。

この書は、聖書の他の部分と同様に神の意図を探求する人々にとって重要な位置を占め、初期キリスト教の研究においても避けて通れない資料です。これにより、初期の教会の活動や信仰の発展を深く理解するための道を開くものとなっています。

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