エフド

エフド（Ehud ben-Gera、ヘブライ語: אֵהוּד בֶּן-גֵּרָא）は、旧約聖書の「士師記」に登場する人物で、イスラエルの民を導いた士師の一人です。彼はベニヤミン族の出身で、ゲラの子として生まれました。特筆すべきは、彼が左利きであったという点です。これは当時の社会において珍しく、彼の戦術や行動に影響を与えたと考えられます。

選出の背景

初代士師オトニエルの死後、イスラエルの民は再び神の教えから離れ、悪を行うようになりました。その結果、神の怒りを買い、モアブの王エグロンとその同盟軍によって18年間も支配されることになります。苦難の中で、民は神に助けを求め、それに応えて神はエフドを「救出者」として選びました。

モアブへの反撃

神に選ばれたエフドは、モアブへの反撃を計画します。まず、彼はエグロンに貢ぎ物を献上する使者として派遣されることになります。エフドは、この機会を利用し、長さ一ゴメド（約45センチメートル）の剣を自作しました。そして、左利きであることを利用して、右の股に剣を隠し持ち、エグロンのもとへと向かいました。

貢ぎ物を届け終えた後、エフドは使者たちを帰らせ、自身は再びエグロンのもとへ戻りました。そして、エグロンに二人だけで話したいと申し出ました。エグロンが涼しい部屋で座っていると、エフドは神の言葉を伝えるために近づき、油断しているエグロンの腹部に隠し持っていた剣を突き刺しました。エグロンは肥満体であったため、剣は完全に腹部の中に埋まり、糞便が出てきました。エフドはすばやく部屋の扉を施錠して逃走しました。

エグロンの従者たちは、鍵がかかっているため異変に気づくのが遅れました。その間にエフドは逃げ延び、セイラに到着すると角笛を吹き鳴らし、民を集結させました。そして、集まった民と共にモアブ軍を打ち破り、約1万人のモアブ人を討ち取りました。この勝利によってイスラエルはモアブの支配から解放され、エフドが生きている間、80年間平和が続いたとされています。

エフドの功績

エフドは、その知恵と勇気によってイスラエルの民を圧政から解放した英雄として、旧約聖書に名を刻んでいます。彼の物語は、神に選ばれた者が、困難な状況下でも知恵と勇気を振り絞って使命を果たすことができることを示しています。また、左利きという特異な点を活かした戦術は、彼の個性と才覚を際立たせ、読者に深い印象を与えます。

エフドの物語は、困難に立ち向かう勇気と神への信仰の重要性を教えてくれる、聖書の中でも特に感動的な物語の一つです。彼の生涯は、現代においても多くの人々に希望と勇気を与え続けています。

参考文献

聖句は『新共同訳聖書』日本聖書協会からの引用。

関連項目

• - 聖書の登場人物の一覧
• - 士師記

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