エプソム競馬場

エプソムダウンズ競馬場：英国競馬の聖地

ロンドン南部に位置するエプソムダウンズ競馬場は、英国、いや世界競馬史において重要な役割を担う競馬場です。日本では「エプソム競馬場」として広く知られており、クラシック競走のダービーとオークスの開催地として名高い、歴史と伝統に彩られた場所です。13万人を超える観客を収容可能な広大な敷地を誇り、英国競馬の象徴と言えるでしょう。

歴史と伝統

エプソムダウンズでの競馬の歴史は古く、16世紀には既にこの地で競走が行われていたと伝えられています。ハンプトンコート宮殿に近いという立地条件も手伝い、エリザベス一世やジェイムズ一世といった英国王室もこの地を訪れ、レースを主催した記録が残っています。良質な鉱泉が湧出する保養地でもあったエプソム・ダウンズは、観戦しやすい傾斜のあるコースと相まって、貴族階級の人々にも人気を集めました。

1661年にはこの地で初めて公式な競走が開催され、1779年にはオークス、1780年にはダービーが創設されました。これらのクラシック競走は現在でもエプソムダウンズ競馬場で開催され続け、英国競馬界の最高峰としてその地位を確固たるものとしています。1952年には、この競馬場を舞台にした映画「Derby Day」が公開され、その人気をさらに高めました。2009年には、1万1千人を収容する「Duchess's Stand」と呼ばれる新たな観客スタンドが完成。会議や展示会などにも利用され、競馬場としての機能を拡張しています。

挑戦的なコースレイアウト

エプソムダウンズ競馬場のコースは、全長約2410メートル（約12ハロン）の馬蹄形コースで、左回りの芝コースです。ダービーコースは、スタート直後から上り坂が始まり、緩やかな右カーブを経て最初の左カーブに差し掛かります。この最初の1100メートル程で約42メートルの高度上昇を経験します。その後は下り坂となり、急勾配の最終左カーブ（タッテナムコーナー）を経て、約700メートルの直線コースへと続きます。この直線コースでも高低差があり、ゴール手前100メートル過ぎまでは約30メートル下り、最後の50メートルで再び上り坂となります。さらに、直線コースは外埒側から内埒側に向かって傾斜しており、コース全体を通して馬と騎手にとって非常にタフな、挑戦的なレイアウトとなっています。

タッテナムコーナー奥の引込み線からは、5ハロン（約1006メートル）のレースも行われます。コースの大部分が下り坂であることから、非常に速いタイムが出やすいコースとしても知られ、1960年にはIndigenousという馬が手動計測ながら53.6秒という驚異的な記録を残しています。かつては、コース中央に逆S字型の「グレートメトロポリタンコース」が存在し、18ハロン（約3621メートル）のレースも行われていましたが、改修により現在は消滅しています。

競走馬にとって負担の大きいコースであることから、ダービーやオークスの開催中止や開催地変更が議論されたこともありましたが、長い歴史と伝統を継承するという理由から、現在もこの競馬場で開催され続けています。

主要競走

エプソムダウンズ競馬場で行われる主要競走は、言うまでもなくダービーとオークスです。これら以外にも、多くの重要なレースが開催され、英国競馬界を牽引する存在となっています。

まとめ

エプソムダウンズ競馬場は、単なる競馬場という枠を超え、英国の文化・歴史を象徴する場所です。その歴史、伝統、そして挑戦的なコースレイアウトは、多くの競馬ファンを魅了し続けています。今後も、ダービーとオークスを始めとする数々の名レースが、この歴史と伝統に彩られた舞台で繰り広げられることでしょう。

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