エベル・バネガ

エベル・バネガ：天才とトラブルメーカーの狭間を歩んだサッカー人生

エベル・マクシミリアーノ・ダビド・バネガ。1988年、アルゼンチンのロサリオに生まれた彼は、幼少期から地元クラブ、ニューウェルズ・オールドボーイズの大ファンとして知られ、その情熱は右足の裏に刻まれたクラブの紋章のタトゥーからも見て取れます。

華々しいデビューとヨーロッパ挑戦

首都ブエノスアイレスのボカ・ジュニアーズの下部組織で育ったバネガは、18歳にして将来を嘱望される若手選手となりました。2007年、主力選手の移籍に伴い、トップチームに抜擢。デビュー戦で圧勝を飾ると、たちまちレギュラーの座を掴み、リケルメらと共に攻撃を牽引。その年のコパ・リベルタドーレス制覇に貢献する活躍を見せました。わずか数試合の出場にも関わらず、途中交代時にはスタンディングオベーションが贈られるほど、その才能は高く評価されました。

その活躍はヨーロッパの強豪クラブの目に留まり、2008年、バレンシアへと移籍。移籍金は1800万ユーロに上りました。バレンシアでは、アトレティコ・マドリードへのレンタル移籍を挟みつつ、10シーズンに渡りプレー。しかし、そのキャリアは順風満帆ではありませんでした。アトレティコ時代には2度の退場処分を受けるなど、時に問題行動を起こすこともありました。得点力に課題を抱えていた彼でしたが、ヌマンシア戦でプロ初ゴールを記録するなど、徐々に実力を発揮していきました。プレミアリーグのエヴァートンへの移籍が噂されるも、労働許可証の問題で実現せず、バレンシアでキャリアを続けました。

イタリアでの挑戦とセビージャ復帰

2016年、バネガはセリエAのインテルへ移籍。ローマ戦でセリエA初ゴールを記録するなど、アタランタ戦ではハットトリックを達成するなど鮮烈な活躍を見せる一方で、レギュラーポジションの確保には至りませんでした。

わずか1年でセビージャへと復帰。再びエメリ監督の下でプレーする機会を得て、3度のUEFAヨーロッパリーグ優勝に貢献するなど、輝きを取り戻しました。

サウジアラビアでの活躍と古巣復帰

2020年、サウジアラビアのアル・シャバブへ移籍。ヨーロッパリーグ決勝戦後、新たな挑戦の場を求めました。そして2024年、ついに幼少期からの夢であった古巣ニューウェルズ・オールドボーイズへ復帰。2年契約を結び、再びアルゼンチンでプレーすることとなりました。

アルゼンチン代表での栄光と数々のトラブル

バネガはアルゼンチン代表としても活躍しました。U-20ワールドカップ優勝、北京オリンピックでの金メダル獲得など、輝かしい実績を残しています。A代表ではワールドカップ予選で代表初ゴールを記録するなど、重要な役割を果たしました。

しかし、そのキャリアには数々のトラブルが付きまといました。飲酒運転による逮捕、交通事故、フェラーリ炎上事故など、度々問題を起こしました。2019年には、新型コロナウイルスのパンデミック下での外出制限令にも関わらず、パーティーやナイトクラブでの騒動を起こすなど、批判を浴びました。また、ヨーロッパリーグ決勝戦では、相手監督との衝突も引き起こしました。

タイトル

ボカ・ジュニアーズ：コパ・リベルタドーレス (2007)
バレンシア：コパ・デル・レイ (2007-08)
セビージャ：UEFAヨーロッパリーグ (2014-15, 2015-16, 2019-20)
U-20アルゼンチン代表：FIFA U-20ワールドカップ (2007)
* U-23アルゼンチン代表：オリンピックサッカー金メダル (2008)

バネガのキャリアは、類まれな才能と度重なるトラブルが複雑に絡み合った、波乱万丈なものでした。彼のサッカー人生は、才能あふれる選手が、如何に自らをコントロールし、成功を掴むか、そしてその過程で何を学び、何を失っていくのかを問いかける、一つの物語と言えるでしょう。彼の今後の活躍に期待しつつ、その複雑な人生を深く見つめていく必要があるでしょう。

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