エマオの晩餐 (カラヴァッジョ、ミラノ)

作品概要

『エマオの晩餐』は、イタリアのバロック期を代表する画家カラヴァッジョによって1606年頃に描かれた油彩作品です。現在はミラノのブレラ絵画館に所蔵されています。この作品は、聖書に記されたイエス・キリスト復活後の出来事、エマオへの道中で弟子たちと食事を共にする場面を描いています。

歴史的背景

この作品は、1624年までにマルケーゼ・パトリージのコレクションに収蔵されました。パトリージからの依頼によって制作された可能性が高いとされています。カラヴァッジョの初期の伝記作家たちは、画家がラヌッチョ・トマソーニの死後、マルツィオ・コロンナ王子の邸宅に身を隠していた1606年5月からの数ヶ月の間に描いたと記録しています。しかし、この作品は同年の初めにローマで制作された可能性も指摘されています。宿屋の主人の妻として描かれた人物は、1605年の作品『聖アンナと聖母子』に登場する聖アンナのモデルと同一人物であると見られ、ポーズと照明の配置から、記憶を基に描かれた可能性が示唆されています。

作品の特徴

本作は、ロンドンのナショナル・ギャラリーに所蔵されている同題材の作品と比較されることが多いです。ロンドンの作品が演劇的な身振りで劇的な場面を強調しているのに対し、ミラノの作品はより控えめで自然な表現が用いられています。影はより暗く、色彩は落ち着いていますが、それでも鮮やかさを失っていません。ドラマチックな演出よりも、人物の存在感に焦点が当てられている点が特徴です。細部には、右側の弟子の耳や宿屋の妻の右手など、やや未熟に見える部分も見られますが、全体としてカラヴァッジョの筆致の流動性が感じられ、ローマ時代以降の彼の作風の特徴を示しています。

構図と人物

カラヴァッジョは構図を練る際に苦労したのではないかという指摘もあります。宿屋の主人の妻は、後から追加されたように見えるためです。宿屋の主人とその妻は、ルカによる福音書には登場しませんが、ルネサンス期の画家たちによって、復活したキリストを認識する弟子たちの驚きの受け手として描かれるようになりました。

展示

2013年6月には、クロアチアがEUに加盟したことを記念して、イタリア政府からの贈り物としてザグレブの美術工芸博物館に展示されました。また、2014年3月には香港のアジア協会で開催された展示会「光と影–カラヴァッジョ•イタリアのバロックの巨匠」のために貸し出され、多くの観客の目に触れました。

参考文献

Gash, John (2003). Caravaggio. ISBN 1-904449-22-0
Langdon, Helen (1998). Caravaggio: A Life. [ISBN]] 0-374-11894-9. [https://archive.org/details/caravaggiolife00lang
* Robb, Peter (1998). M. ISBN 0-312-27474-2

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