エムスドルフの戦い

エムスドルフの戦い：1760年、七年戦争の一局面

エムスドルフの戦いは、七年戦争中の1760年7月14日に、ヘッセン＝カッセル方伯領のエムスドルフで発生しました。この戦いは、イギリス・ハノーファー・ヘッセン＝カッセル連合軍と、グラウビッツ男爵が率いるフランス軍のドイツ人部隊との間で繰り広げられました。

連合軍は、フランス軍の補給基地であったマールブルクを占領し、フランス軍の連絡線を遮断することを目的としていました。戦闘自体は連合軍の勝利に終わりましたが、マールブルクの占領は実現しませんでした。

両軍の編成

連合軍は、ハノーファーとヘッセンの6個歩兵大隊、ハノーファーの猟兵部隊、ニコラウス・フォン・ルックナーが率いるフサール（軽騎兵）、そしてイギリスの第15軽騎兵連隊によって構成されていました。

一方、フランス軍は、王立バヴィエール連隊、ドナルト連隊からの5個歩兵大隊、フサール大隊、そしていくつかの軽部隊で編成されていました。

戦闘の経過

戦いの当日、イギリス軍は、野営中で昼食を取ろうとしていたフランス軍を奇襲しました。フランス軍のフサールはすぐに戦線を離脱し、逃走しました。残された2個歩兵大隊は、陣形を組んで応戦しようと試みましたが、ヘッセン大隊からの集中砲火を浴び、大きな損害を受けました。

グラウビッツ男爵は、1個大隊をマールブルクへ送り返し、残りの軍勢とともにキルヒハインへ撤退しようとしました。しかし、撤退経路の大部分は、ルックナー率いる軽部隊によって封鎖されていました。撤退中のフランス軍に対し、イギリスの第15軽騎兵連隊が突撃を敢行し、1,650名以上のフランス兵を捕虜にするという大きな戦果を上げました。

戦闘の結果と影響

この戦いにおける連合軍の勝利は、特にイギリスの第15軽騎兵連隊の活躍によるものでした。連合軍全体の死傷者186名のうち、同連隊の死傷者は125名を占めています。連隊を率いたサー・ウィリアム・アースキンは、戦後、鹵獲した16本のフランス軍旗をイギリス王ジョージ3世に献上しました。

しかしながら、連合軍の当初の目的であったマールブルクの占領は、この戦いでは達成されませんでした。エムスドルフの戦いでの活躍は、イギリスの第15軽騎兵連隊にとって、初の戦闘名誉章（戦闘勲章）授与に繋がりました。それ以前の戦闘における戦闘名誉章は、この戦いの後に改めて授与されることになりました。

エムスドルフの戦いは、戦術的には連合軍の勝利に終わりましたが、戦略的な観点から見ると、その影響は限定的であったと言えるでしょう。しかし、イギリス軍の士気を高め、その後の戦いにおける自信に繋がったことは間違いありません。

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