エメリッヒ・ヨーゼフ・フォン・ダールベルク

エメリッヒ・ヨーゼフ・フォン・ダールベルク：激動の時代を駆け抜けた貴族、外交官、政治家

エメリッヒ・ヨーゼフ・フランツ・ハインリヒ・フェリックス・ディスマス・ケメラー・フォン・ヴォルムス、ヘルツォーク・フォン・ダールベルク（1773年5月30日 - 1833年4月27日）は、ドイツ出身の貴族であり、外交官、そして政治家として、激動の時代を生きました。彼は初めバーデン大公国に仕え、後にフランス帝国に仕えるという、稀有な経歴を持っています。1810年からはダールベルク公爵の称号を得ています。

生い立ちと初期のキャリア

ダールベルクは、バーデン大公国の宮内長官であり国務大臣、そしてマンハイム国民劇場の総監督を務めたヴォルフガング・ヘリベルト・フォン・ダールベルク男爵を父に、エリーザベト・アウグステ・ウルナー・フォン・ディーブルクを母として生まれました。彼の父方の伯父は、最後のマインツ選帝侯であり、神聖ローマ帝国の大法官、そしてライン連邦の首座諸侯となったカール・テオドール・フォン・ダールベルクでした。

1803年、ダールベルクは父と同様にバーデン政府の官僚としてキャリアをスタートさせました。パリに駐仏大使として赴任した際、フランスの外相であったタレーランと親交を深めます。1808年6月から1809年3月にかけて、彼はカールスルーエに戻り、財務大臣と内閣責任者を務めました。その後、再び駐仏大使に復帰しましたが、1810年3月にその職を辞し、バーデン政府から完全に退きました。

フランス帝国への仕官

ダールベルク家の所領があったライン左岸地域は、当時フランスに併合されており、モン＝トネール県に組み込まれていました。そのため、ダールベルクはフランス政府に仕えることを決意します。彼はすでにバーデン駐仏大使時代に、ナポレオン皇帝とオーストリア大公女マリー＝ルイーズの婚姻交渉に貢献しており、その実績が評価されました。ダールベルクは公爵位と元老院議員の地位、そして400万フランの下賜金を20年分割で受け取るという破格の待遇を受けました。これは、ナポレオンとハプスブルク家の縁組を実現させたことへの褒賞と見なされました。

しかし、彼の庇護者であったタレーランがナポレオンと対立するようになると、ダールベルクも公職から退けられました。しかし、ナポレオンの失脚後、タレーランを首班とする臨時政府が成立すると、ダールベルクはその閣僚の一人に任命され、ブルボン家による復古王政の実現に貢献しました。彼はウィーン会議にフランス全権公使として参加しましたが、百日天下の際にはナポレオンに忠誠を誓ったため、追放者として財産を没収されました。

王政復古と晩年

第二次王政復古後、ダールベルクは再びブルボン家の下で没収された財産を返還され、国務大臣に就任し、貴族院議員となりました。1816年には駐サルデーニャ王国大使としてトリノに派遣されました。その後はパリで生活し、晩年は一族の居城であるヘルンスハイム城で過ごしました。彼は戦火で焼失した城を再建し、現在の美しい姿に生まれ変わらせました。

子女

1808年、ダールベルクはジェノヴァの名家の娘、マリーア・ペレグリーナ・ブリニョーレ・サーレと結婚しました。彼女はマリー＝ルイーズ皇后の女官として仕えました。夫妻の間には一女がおり、マリー・ルイーズ・ペリーヌ・ド・ダールベルクは、後にイギリスの準男爵ファーディナンド・アクトンやグランヴィル伯爵グランヴィル・ルーソン＝ゴアと結婚しました。彼女の息子であるジョン・ダルバーグ＝アクトンは、初代アクトン男爵となりました。

エメリッヒ・ヨーゼフ・フォン・ダールベルクは、激動の時代を生き抜き、政治と外交の世界で重要な役割を果たした人物でした。彼の生涯は、ナポレオン戦争とウィーン体制というヨーロッパの変革期における政治情勢を映し出しています。

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