エラム・ドラヴィダ語族

エラム・ドラヴィダ語族：古代言語の謎を解く鍵

エラム・ドラヴィダ語族とは、現在では話者がいないエラム語と、インド南部を中心に話されているドラヴィダ語族を結びつける仮説上の語族です。この仮説は、両言語間の驚くべき類似性に着目し、共通の祖語を持つ可能性を示唆しています。

エラム語とドラヴィダ語の類似性

エラム語は古代イラン地域で話されていた言語で、紀元前3000年頃にはすでに存在していたと考えられています。一方、ドラヴィダ語族は、タミル語やテルグ語など、インド南部で話されている多様な言語のグループです。これら一見無関係に見える言語間に、初期の言語学者から類似性が指摘されてきました。

1913年、ロバート・コールドウェルはベヒストゥーン碑文のエラム語とドラヴィダ語の比較研究を行い、共通点を発見しました。その後、フェルディナンド・ボルク（1924年）は、エラム語とドラヴィダ語族の一言語であるブラフイ語の関連性を主張しました。これらの研究を受け継ぎ、デイビッド・マカルピンを中心とした言語学者たちが「エラム・ドラヴィダ語族」という仮説を提唱したのです。この仮説は、フランクリン・サウスワースなどからも支持されています。

インダス文明との関連性

エラム・ドラヴィダ語族仮説を支持する重要な要素として、インダス文明との関連性が挙げられます。インダス文明は紀元前3300年から1300年頃に栄えた古代文明で、その言語は未だ解明されていませんが、ドラヴィダ語族との関連性が指摘されています。

インダス文明はメソポタミア文明と多くの共通点を持っており、文化交流があったと考えられています。もしインダス文明の言語がドラヴィダ語族であったとすれば、メソポタミア文明のエラム語とドラヴィダ語族が共通の起源を持つという仮説は、考古学的にも裏付けられる可能性があります。

ウラル語族、アルタイ諸語との関連性

さらに、ドラヴィダ語族はウラル語族（フィンランド語、ハンガリー語など）やアルタイ諸語（トルコ語、モンゴル語など）との間にも、文法的な類似性を示すと言われています。これらの類似性は、これらの言語が共通の祖先を持つことを示唆する可能性があり、その共通祖先として「原エラム語」の存在を仮定する説もあります。この仮説は、より広範なノストラティック大語族という仮説とも関連しています。

エラム・ドラヴィダ語族仮説の現状

エラム・ドラヴィダ語族仮説は、まだ仮説の段階であり、確定的な証拠は得られていません。しかし、エラム語とドラヴィダ語族の類似性、インダス文明との関連性、そして他の言語との文法的な類似性を総合的に考えると、この仮説は無視できない可能性を秘めています。今後の研究により、この仮説の真偽が明らかになることが期待されます。この仮説は、古代言語の謎を解き明かす鍵となる可能性を秘めていると言えるでしょう。

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