エリアイ (レーダー)

エリアイ（Erieye）

エリアイとは、エリクソン・マイクロウェーブ・システムズ社が設計した三次元レーダーで、正式にはAS-890型として知られています。このレーダーは航空機に装備され、主に早期警戒用途に使用されています。最初のモデルはPS-890としてスタートし、その後FSR-890と改称され、最終的にASC-890となりました。スウェーデン空軍の早期警戒機、S100B「アーガス」はこのレーダーを搭載しており、機体全体のコストは約34億円と推定されています。

背景と開発経緯

1970年代のスウェーデン軍は早期警戒機の導入を検討し始めました。当初のアプローチは、戦闘機に捜索用ポッドを搭載するものでしたが、1982年には議会のマルガレータ・アフ・ウグラス議員の提案により、ターボプロップ輸送機をベースとしたソリューションへと方針が変更されました。この新しいアプローチに基づいて、1985年にはエリクソン社がスウェーデン国防省から早期警戒機用レーダーの開発を受注しました。その際、アクティブ・フェーズドアレイ（AESA）アンテナの採用が求められ、これは当時の先駆けであると言えます。

試験段階ではフェアチャイルド メトロIIIがテスト用機として選ばれ、1983年には風洞試験が行われるなど、開発は順調に推移しました。1986年には本格的な試験が始まり、1987年10月にはエリアイの試作機がスウェーデンに搬入され、1991年には実機のテストが本格化しました。これを受けて、1992年にはFMVがエリクソン社に12億クローナで6セットの発注を行いました。

設計と機能

エリアイは、その特異な設計により、航空機の上面に棒状アンテナを搭載しています。このレーダーは「バランスビーム」型として位置づけられ、全長約9メートルのポッドが4本の支柱によって支えられています。ポッド内にはAESA型アンテナを含むレーダー機器、補助動力装置（APU）が収められ、冷却用の吸排気口が設けられています。

設計上、エリアイは側面監視を主眼に置いたレーダーであり、初期段階ではポッドの両側面にそれぞれ120度の監視範囲がありました。改良により全周スキャンが可能となりましたが、前後方に死角が生じやすく、実際の探知性能の最適化は左右150度ずつとされています。加えて、大部分の機材がポッド内に収められているため、搭載母機のキャビンには最小限の機器が配置され、座席数30のリージョナルライナーに搭載することができるほどのコンパクトさがあります。オペレーターは、例えばサーブ340では3名、サーブ2000やエンブラエルERJ145では最大5名が配置されます。

採用国と搭載機

このレーダーは、様々な国で運用されています。スウェーデン空軍ではS100B「アーガス」に2機搭載され、タイやアラブ首長国連邦などでも使用されています。サーブ340、サーブ2000、エンブラエルERJ145といった車両にも搭載例があります。特に、エリアイの発展型であるエリアイERはグローバル6000に搭載され、スウェーデン空軍の次世代早期警戒機として期待されています。

エリアイは、その先進技術と優れた性能から、現代の航空防衛において重要な役割を果たしています。

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