エリコ

エリコの概要

エリコ（ヘブライ語: יְרִיחוֹ‎、アラビア語: أريحا‎ ／英語: Jericho）は、現在のパレスチナ東部に位置する人口約20,000人の町です。この場所は、死海の北西部に位置しており、世界で最も低い地点にある町（海抜マイナス258m）としても知られています。エリコは古代オリエントの中でも特に古い町の一つで、紀元前8000年頃からの定住の痕跡を持つことから、しばしば「世界最古の町」と称されています。

歴史的背景

エリコの周辺では、紀元前8000年頃にはすでに人々が集落を形成しており、壁で囲まれた定住地が存在していました。この集落は洪水を防ぐための防壁が設けられ、当時の技術の高さを示しています。初期の居住跡はテル・エッ・スルタンと呼ばれる遺跡で見つかり、ここでは数世代にわたって人間の営みが続いたと考えられています。それにより、丘のような土塁が形成されたとされています。

エリコ近郊の遺跡には、紀元前9000年頃の石器や祭壇の痕跡が残っています。特に、先土器新石器A（前8350年～前7370年頃）時代には、石の壁で囲まれた広大な集落が築かれ、その中には高さ8.5mの「エリコの塔」と呼ばれる建物も含まれていました。この塔は、その時代の最も高度な建造物の一つとされており、エジプトのジェセル王のピラミッドが建設されるまでは世界最高の高さを誇っていました。

現代のエリコ

近代のエリコは、1948年の第一次中東戦争中にトランスヨルダンによって占領され、1967年の第三次中東戦争の際にはイスラエルにより占領されました。その後、1994年にはオスロ合意を受けてパレスチナ自治政府に移行し、最初に権限を委譲された都市となりました。エリコは現在、周囲をイスラエルの軍政によるエリアCに囲まれており、パレスチナ人のアクセスは厳しく制限されています。

また、エリコには「スルタンの泉」と呼ばれるオアシスが存在し、古くから人々がここに住む理由ともなっています。町の歴史と文化は、様々な宗教的文書にも言及されていて、旧約聖書にもその名が登場します。特に、「ヨシュア記」の中では、預言者ヨシュアによってエリコの城壁が崩れ落ちた話が語られています。

世界文化遺産としての評価

2023年には、エリコがパレスチナの世界遺産として登録されました。この登録は、歴史的な価値だけでなく、多文化的な伝統を証明する重要な証拠とされています。エリコの文化遺産は、人類の歴史の中で重要な役割を果たしてきたことを示しており、その建築や技術の優れた例として、未来の世代にも引き継がれるべきものです。エリコの魅力は、古代の遺跡や豊かな歴史だけでなく、現代の政治的情勢の中での独自の生きざまにも表れています。

もう一度検索