エリザベート (ミュージカル)

ミュージカル『エリザベート』作品解説

『エリザベート』（原題：Elisabeth）は、19世紀後半のオーストリア＝ハンガリー帝国を舞台に、美貌の皇后エリザベートの生涯を描いたウィーン発のミュージカルです。脚本・作詞はミヒャエル・クンツェ、作曲はシルヴェスター・リーヴァイが手掛けました。

作品の概要

バイエルン王国公爵家の次女として生まれたエリザベートは、自由な環境で育ちました。偶然にも皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に見初められ、16歳でオーストリア皇后となります。しかし、伝統と格式を重んじる宮廷生活に馴染めず、苦悩の日々を送ります。ウィーンを離れ、ヨーロッパ各地を流浪する中で、彼女は暗殺という悲劇的な結末を迎えます。

この作品は、エリザベートに付きまとう「死（トート）」という架空の存在を通して、彼女の半生に迫ります。同時に、中央ヨーロッパにおける帝国支配の終焉と、新しい時代の萌芽を描き出しています。

ミヒャエル・クンツェは、ミュージカルの題材にエリザベートを選んだ理由について、「一つの時代、王朝の終焉を描くと同時に、その最後の時に生きた人々の内面を描きたかった」と語っています。古い時代を代表するハプスブルク王朝にあって、エリザベートは新しい現代的な感性を持っていました。彼女は宮廷文化の凋落を予見し、没落する船から逃れられないと知りながらも、誰よりも自由を追い求め、死に惹かれていく女性として描かれています。

上演の歴史

1992年9月3日、ハリー・クプファーの演出により、アン・デア・ウィーン劇場で初演され、6年のロングランを記録しました。その後、世界各地で上演され、ドイツ語ミュージカルとして史上最大のヒット作となりました。日本においては、宝塚歌劇団が1996年に初演し、2000年からは東宝版も上演されています。

主要登場人物

エリザベート: オーストリア皇后。愛称はシシィ(Sissy)。自由奔放な性格。
死(トート): 死の抽象概念を擬人化した存在。エリザベートに執着する。
フランツ・ヨーゼフ1世: オーストリア皇帝。エリザベートの夫。
ルイージ・ルキーニ: エリザベートの暗殺犯。物語の狂言回し。
ルドルフ皇太子: フランツ・ヨーゼフ1世とエリザベートの息子。「死」に好感を抱く。
ゾフィー: オーストリア皇太后。フランツ・ヨーゼフ1世の母親。エリザベートと対立。

あらすじ

物語は、エリザベート暗殺から100年後の死者の世界で、暗殺犯ルキーニが裁判にかけられる場面から始まります。ルキーニは、エリザベート暗殺の動機は愛であり、黒幕は死だと主張します。そして、エリザベートと同じ時代を生きたハプスブルク帝国の亡霊たちが、彼女について語り始めます。

1853年、エリザベートは、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に見初められ、結婚します。しかし、宮廷生活は彼女の自由を奪い、姑である皇太后ゾフィーとの確執も深まります。エリザベートは、宮廷の束縛から逃れるため、ヨーロッパ各地を旅し、自由を求めます。その中で、「死」が彼女を誘惑し、彼女もまた「死」に惹かれていきます。

エリザベートは、ハンガリーとの関係改善に尽力し、二重帝国成立に貢献しますが、宮廷内での孤立は深まります。息子ルドルフ皇太子もまた、「死」に魅入られ、悲劇的な最期を迎えます。エリザベートは、ルドルフの死後、さらに孤独を深め、旅を続けます。1898年、ジュネーブでルキーニに暗殺され、その生涯を閉じます。

各国での上演

『エリザベート』は、ウィーンでの初演以来、世界各地で上演されています。宝塚歌劇団版、東宝版など、日本でも人気が高く、再演が繰り返されています。演出や楽曲は、プロダクションごとに異なり、新たな解釈が加えられています。

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