エリーカ

エリーカ（Eliica）

エリーカは、2004年に開発された革新的な8輪駆動の電気自動車であり、その実現には慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスを中心に38の企業が協力しました。このプロジェクトは、電気自動車の先駆けとなるもので、市販化も検討されていました。特に2004年2月には栃木県のテストコースで320 km/hを達成し、同年3月にはイタリア、ナルドのテストコースで最高速度370.3 km/hを記録しました。

エリーカは、3000万円程度の価格で約200台が販売される計画がありましたが、量産に向けた技術開発が進められました。2009年8月には、「SIM-Drive」という企業が設立され、電気自動車の技術を事業化すべく、試作車が開発されました。

特徴

エリーカの大きな特徴の一つは、各車輪内にモーターが組み込まれたインホイールモーターシステムです。この技術により、直接車輪を駆動することで機械的損失を抑え、航続距離を増加させることを可能にしています。各モーターはインバーターによって制御されており、一つあたり約80 kWを発生させるため、合計出力は約640 kWに達します。このため、エリーカは優れた加速性能を誇ります。しかし、開発の過程では、各車輪のインバーターの同期に苦労したというエピソードもあります。

この新しい構造により、エリーカのデザインが自由化され、車内空間の拡大も果たされていますが、ブレーキやサスペンション部品が従来のエンジン車と共用できないなどの課題も残りました。

最高速度と加速性能

エリーカは、その性能においても注目されています。2004年3月には370 km/hを記録し、これは当時の最高速度を誇るものでした。さらに、加速性能においても優れた数字を記録しており、ポルシェ911 Turboとの競争では、時速100マイル（約160 km/h）に7.0秒で到達し、勝利を収めました。元F1ドライバーの片山右京も、この特異な加速特性に驚きました。

燃費とエネルギー効率

エリーカは「100円で100 kmの旅」をコンセプトにし、夜間電力で充電した場合、1 kmあたり約1円のコストを実現する狙いを持っています。そのエネルギー効率は、従来のガソリン車と比べて約4倍も優れており、回生ブレーキの活用がその実現に寄与しています。

電力源とサスペンション

エリーカは、日本電池製のリチウムイオン電池を使用しており、電池は軽量のアルミフレームの中に収納されています。このプロジェクトの一環で、元銀行役員による電池メーカーも設立され、リチウムイオン電池の生産が始まっています。また、エリーカ独自のサスペンション設計によって、特異な走行性能が発揮されています。

スペック

エリーカには、最高速度を重視したモデルと加速性能を重視したモデルがあり、それぞれ若干の仕様が異なります。例えば、最高速度挑戦車は時速400 km/hを目指し、高加速性挑戦車は瞬時の加速に特化しています。

• - 全長: 5100 mm, 全幅: 1900 mm, 全高: 1365 mm, 重量: 2400 kg
• - 電池容量: 31 kWhまたは55 kWh
• - 最大出力: 60 kW ×8輪

メディアへの登場

エリーカは、NHKスペシャルや多くのドキュメンタリー番組で取り上げられ、その革新性と性能が広く認知されています。特に、2004年放送の「世界最速への挑戦〜スーパー電気自動車誕生〜」では、その開発秘話や性能が紹介されました。

エリーカは、未来の電気自動車像を示す象徴的な存在であり、技術革新の最前線を行っています。

もう一度検索