エルガーの楽曲一覧

エドワード・エルガーの楽曲は、作品番号（Op.）が付されたものと、そうでないものに大別される。作品番号はOp.90まで確認されており、これにはエルガーが手掛けた管弦楽、室内楽、協奏曲、声楽曲といった主要な音楽ジャンルを網羅した作品が含まれている。しかし、作品番号のないものを含めると、エルガーが生涯に作曲した楽曲は150曲近くに及ぶとされている。

これほど多くの作品を生み出した一方で、特に作曲家活動の初期に生み出された楽曲の中には、未完成に終わったり、楽譜が紛失したり、あるいは作曲者の生前には公表されなかったものが数多く存在する。彼の作品には、完成に至らなかったり、作曲家自身によって日の目を見ることなく処分されたりした例も報告されている。例えば、Op.8の弦楽四重奏曲やOp.9のヴァイオリン・ソナタは、作曲家自身が草稿の段階で破棄したことが知られている。

また、エルガーの晩年の創作活動においては、いくつかの重要な作品が未完成のまま残された。Op.88からOp.90に含まれる楽曲群、とりわけ計画されていた交響曲第3番は、作曲者の死去によって完成に至らなかった代表例である。これらの未完成作品は、後に音楽学者たちの綿密な研究と補筆作業を経て、演奏可能な形で提示されることとなった。エルガーが最晩年に取り組んだピアノ協奏曲（Op.90）もまた未完成のまま残された作品である。この曲は現在、エルガーが唯一作曲したピアノ協奏曲として認識されているが、作曲者の死によって緩徐楽章のスケッチのみが残された状態だった。これは、2005年にイギリスの作曲家ロバート・ウォーカーによって補筆・完成され、初めてその全貌が明らかになった。

大規模な作品として、オペラ『スペインの貴婦人』（Op.89）も未完成に終わっている。エルガーは元々、オペラの作曲を得意とはしていなかったと言われている。この作品に着手したのは、彼の創作意欲が衰え始めていた最晩年のことと重なり、ごくわずかなスケッチを残しただけで作曲者が世を去ったため、計画は頓挫してしまった。しかし、作曲者の死後、音楽学者のパーシー・ヤングは、残された断片的なスケッチと、エルガーの青年期に書かれた未発表の楽曲素材を組み合わせ、このオペラを基にした3曲構成の管弦楽組曲を編纂している。これは、未完成に終わった大作が、別の形で後世に伝えられた一例と言えるだろう。

エルガーの作品の中には、その成り立ちや発見の経緯において特異なものも存在する。例えば、『喫煙カンタータ』と名付けられた作品には、「1001」という非常に珍しい番号が付されている。このカンタータは1919年に作曲されたとされ、友人からの依頼を受けて冗談半分に書かれたものとも伝えられている。エルガー自身が遊び心で書いたとされるこの作品は、長年にわたり楽譜が日の目を見ることなく埋もれていたが、一般にその存在が知られ、公開されたのは2003年から2004年になってからのことであり、録音も比較的近年に行われたという経緯を持つ。

エルガーは英国を代表する作曲家として数多くの名作を世に送り出し、後世に豊かな遺産を残したが、同時に彼の創作活動には、未完成、紛失、そして未発表のまま時を経て再発見された作品が少なくない。長らく顧みられることのなかった作品の一部は、2003年から2004年にかけてロンドンの大英図書館において再発見され、エルガー研究の新たな光となっている。これらの発見は、彼の創造の過程や、まだ知られていない側面を明らかにする重要な手がかりを提供している。

エルガーの楽曲リストを紐解くと、彼の幅広い関心と作曲技量の多様性がうかがえる。交響曲、協奏曲、管弦楽組曲といった大規模な器楽曲から、オペラ、オラトリオ、カンタータといった声楽作品、さらには室内楽や歌曲に至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて重要な作品を残している。これら既知の作品に加え、未完成のまま残されたもの、あるいは埋もれていたものが時間とともに明らかになってくることで、エルガーの音楽世界はさらに深みを増している。彼の作品群全体を知ることは、20世紀初頭における英国楽壇の様相を理解する上でも欠かせない作業と言えるだろう。

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