エルサレムをイスラエルの首都とするアメリカ合衆国の承認

エルサレム首都承認問題とは

2017年12月6日、当時のアメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプが、エルサレムをイスラエルの首都として正式に承認し、在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムに移転する方針を発表したことは、国際社会に大きな波紋を広げました。

承認の背景

1948年のイスラエル建国以来、アメリカはイスラエルを国家として承認していましたが、エルサレムの地位については、交渉による解決を支持し、大使館の移転を控えてきました。これは、エルサレムの将来が一方的な行動によって左右されるべきではないという立場を示すものでした。

しかし、1995年にアメリカ議会でエルサレム大使館法が可決され、エルサレムをイスラエルの首都として承認し、大使館を移転することが求められるようになりました。ただし、大統領には安全保障上の理由で移転を延期する権限が与えられており、歴代大統領は延期を繰り返してきました。

2016年の大統領選挙で、トランプ大統領は大使館のエルサレム移転を選挙公約に掲げ、2017年12月、ついにエルサレムをイスラエルの首都として承認するに至りました。

国際社会の反応

この決定は、国際社会から強い批判を浴びました。欧州連合（EU）をはじめとする多くの国や国際機関が、エルサレムの地位は交渉によって決定されるべきであるとし、アメリカの決定を非難しました。

国際連合安全保障理事会でも、アメリカの決定を非難する決議案が提出されましたが、アメリカが拒否権を行使し、否決されました。その後、国連総会でトランプ大統領を非難する決議が採択されましたが、アメリカは孤立する形となりました。

パレスチナの反応

この決定は、パレスチナ人の間で激しい怒りを引き起こし、ヨルダン川西岸地区やガザ地区で大規模なデモが発生しました。一部では、イスラエルに向けてロケット弾が発射されるなど、暴力的な衝突も発生しました。

パレスチナ自治政府は、アメリカが和平交渉の仲介役としての資格を失ったと非難し、新たな和平交渉の枠組みを模索する姿勢を示しました。

アメリカ国内の反応

アメリカ国内でも、この決定に対する意見は分かれました。キリスト教福音派などの保守的な団体は、トランプ大統領の決定を支持しましたが、ユダヤ教改革派や一部のユダヤ系団体は、紛争の激化を懸念し、批判的な声明を発表しました。

また、元駐イスラエル大使の中にも、この決定を批判する者がおり、アメリカの国際的な孤立を招く可能性を指摘しました。

エルサレム大使館の開館

2018年5月14日、イスラエル独立70周年にあたる日に、アメリカ大使館はエルサレムに正式に移転、開館しました。この式典には、トランプ大統領の側近や当局者が出席しましたが、パレスチナ人は抗議デモを行い、ガザ地区では大規模な衝突が発生し、多数の死傷者が出ました。

承認の影響

トランプ大統領によるエルサレム首都承認は、中東和平プロセスに深刻な影響を与え、イスラエルとパレスチナの対立を激化させる要因となりました。また、アメリカの国際的な地位を低下させ、同盟国との関係にも影を落としました。

この決定は、エルサレムの将来をめぐる問題が、依然として中東和平の最大の懸案事項の一つであることを改めて浮き彫りにしました。

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