エルププリンツ

エルププリンツ：ドイツ語圏における法定推定相続人の称号

エルププリンツ（ドイツ語: Erbprinz）は、かつて神聖ローマ帝国、ドイツ連邦、ドイツ帝国などのドイツ語圏において、諸侯の法定推定相続人が名乗った称号です。フランス語圏では、プランス・エレディテール（prince héréditaire）またはプランス・エリティエ（prince héritier）が同様の意味で使用されました。

概要

エルププリンツの称号は、国家主権を有する、あるいは等族領主身分を有する諸侯（王より下位の公爵やフュルストなど）の法定推定相続人に与えられました。当時の諸侯家のほとんどは、サリカ法典に準拠した父系長子相続制を採用していたため、エルププリンツの称号は現君主の最年長の男子、またはそれに最も近い父系親族に与えられるのが一般的でした。

1918年のドイツ革命後、1919年にヴァイマル憲法が制定されたことにより、ドイツ国内における他の貴族称号とともに、エルププリンツの称号も公的には廃止されました。ヴァイマル憲法は貴族という身分上の特権や世襲貴族の存在を否定し、それまで生得的な称号であったエルププリンツの称号も、国家公民としての権利のみを認めるという立場から廃止されたのです。

しかし、ドイツの旧諸侯家の子孫や旧貴族団体は、貴族称号の歴史的・系譜学的な意義、そして諸侯家が伝えてきた伝統文化の保護という観点から、貴族称号の使用を主張しました。その結果、現在でもヘッセン大公家、バーデン大公家、アンハルト公爵家をはじめとする55の旧独立領邦君主家や、陪臣化された諸侯家の次期家督相続者が、いわゆる「血統的権利（Hausrechtlicher Regelung）」に基づいて、私的に「エルププリンツ」の称号を使用しています。

その他の称号

ドイツ語圏では、皇帝・国王の法定推定相続人（皇太子/王太子）は「クロンプリンツ（Kronprinz）」と呼ばれていました。また、大公（Großherzog）や公（Herzog）の長子は、その身分の高さを強調するために「エルプグロスヘルツォーク（Erbgroßherzog）」（大公世子）、「エルプヘルツォーク（Erbherzog）」（公世子）と名乗る場合が多かったようです。1866年まで存在した選帝侯の法定推定相続人は、特に「クーアプリンツ（Kurprinz）」と区別して呼ばれていました。帝国伯（ライヒスグラーフ/Reichsgraf）の法定推定相続人の称号は、「エルプグラーフ（Erbgraf）」（伯世子）でした。

現在の状況

リヒテンシュタイン公国（侯国）、ルクセンブルク大公国、モナコ公国では、これらの称号が現在も使用されています。例えば、リヒテンシュタイン公（侯）ハンス・アダム2世の長男アロイスはリヒテンシュタイン公世子（侯世子）（独：Erbprinz von und zu Liechtenstein）の称号を、ルクセンブルク大公アンリの長男ギヨームはルクセンブルク大公世子（仏: Grand-Duc Héritier de Luxembourg ／独: Erbgroßherzog von Luxemburg）およびナッサウ公世子（仏：Prince Héritier de Nassau／独：Erbprinz von Nassau）の称号を用いています。モナコ公アルベール2世も、2005年に即位する前はモナコ公世子（仏：prince héréditaire de Monaco）の称号を使用していました。

関連項目

法定推定相続人
推定相続人
皇太子

外部リンク

Erstgeburtstitel
* Prinz in Meyers Lexikon von 1905

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